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最後まで外崎に代打は送らなかった。
西武・辻監督、育成重視の1年目。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byKyodo News
posted2017/10/17 12:15
CS最終戦、西武のスタメンは1番から5番までが20代で占められた。辻監督が押し進めた世代交代は、着実に実を結びつつある。
もちろん、勝利を放棄していたわけではない。
辻監督は勝利と育成で揺れる選手起用においても、勝利を放棄したわけではないと語った。
「やっぱり勝つことが1番上にいないといけないんです。経験するだけでいいよっていうわけじゃない。勝つためにどうしなきゃいけないか、というのを思ってくれなきゃ困る。山川は途中から這い上がってきて、でも自分の成績がダメになったら代えられる。その危機感の中でプレーをしていた。その中で中盤を迎えて、3位に入れるところから始まって2位が見えてきた。2位でCSが決まってファイナルを目指してきて、それは叶わなかったけど、選手と一緒に戦ってきた充実感はある。外崎は、今日の試合で最後のバッターになったけど、その悔しさが本人のステップアップに繋がるんじゃないかなと思う」
長年チームを支えてくれた選手に別れを告げて。
CSが始まる以前の10月6日、西武は来季の契約を結ばない選手を発表した。
そのメンバーの多くは、この数年間の苦しい時期にチームを支えてきた選手が名を連ねていた。代打・守備・走塁など、ユーティリティな能力を持ち、チームを支えてきた面々だ。特に8月14日まで一軍にいた上本達之と渡辺直人は、CSの戦力にもなり得る選手だった。
実際は、今回のCSで彼らが呼ばれることはなかった。ただ「戦力外」ではないと思う。どんな場面でも力を発揮してくれる存在は、チームにとって貴重だった。しかし、彼らに頼ってばかりのチームでは進歩していかない。チームが先に進むために、涙を飲んで彼らとの契約を打ち切ったのだろう。
炭谷銀仁朗や野上亮磨のFA移籍や、牧田和久のメジャー挑戦を含む移籍が噂されている。人が動くのは今の制度上、仕方がないことだし、それを受け入れて前に進まなければいけない。同じ状況でも勝っているチームはある。
難題はこれからも続いていくが、2017年は下地をつくるシーズンになったのではないか。
辻監督は最後の言葉をこう締めた。
「(優勝への)下地ができたか。それはわからない。来シーズンに入ってから選手たちがどう成長してくれているか。ただ、選手たちがどうなっていくか、楽しみではあります」
若手の成長を促しながら、ひとまずはシーズン2位という足跡を残した。
結果は悔しいはずだ。この糧をどうつなげていくかが、辻監督がチームに求めることである。