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最後まで外崎に代打は送らなかった。
西武・辻監督、育成重視の1年目。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byKyodo News
posted2017/10/17 12:15
CS最終戦、西武のスタメンは1番から5番までが20代で占められた。辻監督が押し進めた世代交代は、着実に実を結びつつある。
「他にいるわけではない。彼らを使っていく」
シーズン開幕から、辻監督はとにかく我慢の起用を続けた。
開幕のオーダーにはルーキーの源田壮亮、大卒6年目・田代将太郎、木村文紀がスタメン入り。まず源田がレギュラーをつかんだ。徐々に出場機会を減らしていった田代と木村の代わりに出場機会を得たのが、同じ若手の外崎と山川穂高だった。
もともと内野手だった外崎は4月中旬から外野を守るようになったが、5月までの打率は1割台。それでも辻監督は、スタメンに外崎の名を書き続けた。
序盤戦の頃、「我慢強い起用」について、辻監督はこんなことをいったものだ。
「他にいるわけではない。彼らを使っていく。その中でもいいところを見せるようにはなってきているからね。そこを信じていくしかない」
外崎はやがてレギュラーを掴み、シーズンを走り切った。
一方の山川も、一度は二軍降格の憂き目にあいながら這い上がってきた。
同じ場面で山川を再び送り出した辻監督。
山川の起用に関してとても印象に残っている試合がある。4月28日のロッテ戦だ。
前日のオリックス戦で6回表1死一、二塁の場面で併殺に倒れた山川は、この日はスタメンから外れていた。しかし、2-2の同点で迎えた延長12回裏、1死一、二塁の好機をつかむと、辻監督は前日と同じ場面に山川を代打で送り出したのである。
結果は三振。後続も倒れ、勝つことはできなかった。
試合後、山川はファンからのヤジにさらされたが、辻監督はこんな言葉を残している。
「1死一、二塁でどんなバッティングをするべきかというと、三振するか、頭を越すかなんですよ。その話は前の日に山川としていて、同じシチュエーションが来たぞっていって代打に送りました。結果は三振でしたけど、それでいいんですよ。経験だから」
その試合から2日後に山川は二軍へ降格したが、2カ月後に一軍に戻ってくると、まるで別人のようなプレーを見せるようになった。