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最後まで外崎に代打は送らなかった。
西武・辻監督、育成重視の1年目。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byKyodo News
posted2017/10/17 12:15
CS最終戦、西武のスタメンは1番から5番までが20代で占められた。辻監督が押し進めた世代交代は、着実に実を結びつつある。
指揮官が結果だけを追い求めてしまうと……。
復帰戦で本塁打を放ち、出場機会も徐々に増えていく。7月26日からは完全にレギュラーに定着し、8月2日には楽天・則本昂大からの2打席連続を含む1試合3本塁打。これで自信をつかみ、山川は8月の月間MVPに輝く成績を残したのである。9月7日以降は4番に座る試合も増えた。
山川はよく言っていたものだ。
「僕には明日がない。次の打席すら約束されていない。その気持ちがいい結果につながっているんだと思います。でも、レギュラーを掴んだという気持ちは持っていないですね」
指揮官自身が結果だけを追い求めてしまうと、若手の成長は一過性のものになる。辻監督はそうならないように努力をしていたのだ。
CSでも、外崎に代打を送ることはついになかった。
しかし一方で、「勝利」を犠牲にしたケースがあったのも事実だ。
山川の4月のロッテ戦はまさにその1例だが、この試合以外でも、ベテランの代打に頼れば結果が出る可能性が高まる場面であっても、外崎らの若手をそのまま打席に送りだした場面が何度もあった。
シーズン序盤であれば、そうした采配も理解しやすい。
後半に向けて、戦える選手を育てていく。そのために目先の勝利をいくつか犠牲にするという考え方はありうる。しかし、辻監督は後半になっても起用法を変えようとはしなかった。ルーキー源田のフルイニング出場にこだわり、外崎をスタメンからほとんど外さなかった。山川も、最後まで4番で起用し続けてシーズンを終えたのだ。
CSファーストでは、源田、山川、外崎が3試合フル出場を果たした。守備面での貢献の高い源田、4番の山川は成績を残していたが、外崎のパフォーマンスは落ちていた。それでも彼がベンチに下がることはなかった。
外崎に代打を出す機会がなかったわけではない。2戦目の7回裏、楽天が外崎に右投手をぶつけてきた場面でも、第3戦の7回裏、そして9回裏二死。どの場面でも、辻監督は動かなかった。