炎の一筆入魂BACK NUMBER
広島を支えるコーチ陣の“3本の矢”。
打撃コーチ・迎祐一郎の愛と厳しさ。
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2017/08/07 07:00
今季に入って再びバージョンアップしたかのように目覚ましい活躍を見せる丸(右)と、その指導をする迎コーチ。
「大した成績も残してないのに偉そうなことを言って」
「僕でいいのだろうか? やっていけるのか?」
当時まだ32歳の迎は素直にそう思った。
現役の多くを広島ではなくオリックスで過ごし、実績も残せていない。年上の選手もおり、すでに実績を残した選手たちもいる。何より指導者1年目から二軍ではなく、補佐とはいえ勝利が最優先の一軍だったからだ。
それでも迎は首を縦に振った。
新たな野球人生の始まりに、心に決めたことがある。
「現役時代にコーチの方に対して『大した成績も残してないのに偉そうなことを言って』と思ったことがある。でもなんでそう思ったかと考えれば、選手への接し方や、ものの言い方から感じられるものだと思う。ダメなことはダメ、大丈夫なことは大丈夫。15年間、選手としてやらせてもらった中で接してきたコーチの方たちとのコミュニケーションの中で、こうだったらちょっと話しやすかったかなと思ったり、聞きやすかっただろうなというのはある」
前年まで共にプレーした選手ばかりだったことはプラス面もあれば、なれ合いになってしまうマイナス面もあった。だが、迎コーチ補佐(当時)ははっきりと線引きをした。
「自分の中でコーチ像があるわけじゃない。僕はいいも悪いも、おかしいと思ったことは言う。たとえば、レギュラーと控え選手でどこか分けてしまうところがあるけど、それをゼロに、分け隔てなく言う。それは変わらない」
毎日欠かさず各選手のポイントをチェックしている。
指導法はいたってシンプル。
2人に勝る広島での打撃指導歴の長さが、生きる。
「1日1日欠かさず見ないといけないポイントはあります。それは選手によって違うし、各選手に対してそのポイントを持っています。こうなればちょっとおかしくなるとか、反対にこの状態でもこのポイントがずれていなければ、すぐに(いい状態に)戻れるなというものがある。別にマニアックなところを見ているわけじゃないですよ(笑)」