ぶら野球BACK NUMBER
ジャイアンツを追って東北へ……。
村田兆治伝説と福島牛の2泊3日旅。
text by
中溝康隆Yasutaka Nakamizo
photograph byYasutaka Nakamizo
posted2017/07/13 11:00
これぞ「野球ぶらり旅」の醍醐味! 巨人戦がある球場最寄り駅の「羽前長崎駅」の佇まい。
2013年に日本一になってから楽天ファンが増えた。
帰りは山形駅西口行きのシャトルバスに乗った。
500円の運賃で30分弱で到着。夜ご飯はホテル近くの蕎麦屋で山形名物“板そば”を注文したら、とんでもないボリュームで思わず「これ大盛りですか?」と聞くと、「普通盛りだよ。関東の蕎麦は量少ないよね」とのこと。
東京から野球観戦に来たと言ったら、元巨人ファンのオヤジさん曰く2013年に日本一になってから山形でも楽天ファンが急増したという。
綺麗ごとじゃなく、やはり勝負事は勝ってナンボである。
いつの時代も、勝利の熱がライトユーザーを巻き込み徐々に大きく広がっていく。
一昔前は巨人にとって日本全体がホームタウンだった。
勝ってナンボ……皮肉にも翌日に移動した福島でそれを痛感することになる。
福島県営あづま球場は観衆11439人。地元の人も嘆く駅からのアクセスの悪さを加味しても、空席が目立つやや寂しい客入りだ……と書くと巨人人気の低迷とタブロイド紙は喜んで報じそうだが、9月に松本と前橋で行われる中日戦のチケットはすでに発売即日完売。地域によってはまだ巨人人気は根強い。ただ、東北はすでに創立13年目のシーズンを戦う楽天イーグルスのホームグラウンドということなのだろう。
山形の蕎麦屋のオヤジさんの言葉を借りると「私らが若い頃はテレビで巨人戦しかやってなかったし、他に選択肢がなかった」というリアル。毎晩のように巨人戦を地上波ゴールデンタイムで生中継していた時代は、良くも悪くも「ガチの巨人ファン」ではなく「なんとなく巨人ファン」が多かったように思う。なんとなくテレビを付けたらナイター中継やっていたから、なんとなく巨人ファンのお父さんと子どもたち。
今はテレビをつけたら地元の野球チーム、サッカー、フィギュアスケート、テニスと多チャンネル化でなんでも選び放題だ。ちなみに埼玉に住む同級生の子どもは、Jリーグ大宮アルディージャのファンだという。
2017年のニッポン、気が付けば全国各地の「なんとなく巨人ファン」層が消えた。
もはや北海道の元なんとなく巨人ファンは地元の日本ハムやコンサドーレ札幌を応援するだろうし、東北の元なんとなく巨人ファンはオラが街のチーム東北楽天ゴールデンイーグルスを応援するはずだ。
時代は鮮やかに変わったのである。