ぶら野球BACK NUMBER
ジャイアンツを追って東北へ……。
村田兆治伝説と福島牛の2泊3日旅。
posted2017/07/13 11:00
text by
中溝康隆Yasutaka Nakamizo
photograph by
Yasutaka Nakamizo
巨人ファンは負け慣れていない。
だって、巨人はセ・リーグでクライマックスシリーズがスタートした2007年から10年連続で出場中だ。つまり、この10年は普通なら優勝、最低でもAクラスという贅沢なシーズンを送って来た。
ふと思う、何でもないようなことが幸せだった原巨人。
首位広島とは遠く離され、3位DeNAとのゲーム差もジリジリ広がっている今、球場観戦へのモチベーションが試されている。
テレビやラジオならまだいい。スマホをいじりながら、なんなら仕事をしながらでも観賞ができるから。けど、球場では逃げ場がない。とにかく目の前の野球を見つめるしかないのだ。じゃあ若手の成長を楽しみにしようって、まだ半分以上ペナントレースが残っているのに消化試合モードは寂しすぎる。
勝ちたい、でも勝てへんねん。残り3カ月、どうしたらいいんだよ俺ら。
そんな時、絶妙なタイミングで山形と福島でヤクルトvs.巨人の2連戦が開催された。遠征は最高だ。日常のしがらみを忘れ、同時にペナントの結果からも逃げられる。言わば、非日常のプロ野球体験。JR東日本のCMで松岡茉優も言っている。「行くぜ、東北。」ってさ。6月下旬のよく晴れた午後、東京駅から“つばさ”に乗った。
人生初めての「山形県東村山郡中山町」。
今夜、本当にここでプロ野球があるのだろうか?
6月27日17時半、俺は見知らぬ街の駅のホームにひとり立ち尽くしていた。電車からは家族連れや学校帰りの高校生が大量に降りてくる。さくらんぼの香り漂う山形駅から1時間に1本しか出ていないJR左沢線に乗り、車内で「本日はプロ野球開催のため通常4両のところ6両に増やして運行していますぅ~」というご機嫌なアナウンスに心の中で拍手を送りながら、羽前長崎(うぜんながさき)駅で降りた。
山形県東村山郡中山町……。
もちろん生まれて初めて来る街だ。目の前には緑の山と畑の風景が広がっている。それにしても空気が澄んでいて気持ちいいな。
って球場はどこですか?