ぶら野球BACK NUMBER
ジャイアンツを追って東北へ……。
村田兆治伝説と福島牛の2泊3日旅。
text by
中溝康隆Yasutaka Nakamizo
photograph byYasutaka Nakamizo
posted2017/07/13 11:00
これぞ「野球ぶらり旅」の醍醐味! 巨人戦がある球場最寄り駅の「羽前長崎駅」の佇まい。
誰だって理想より生活に追われ、ダラダラと……。
そんな中年の星・村田も200勝にリーチをかけてから、中指の爪をはがすアクシデントに見舞われるなど2戦足踏み。そして迎えた三度目の挑戦は山形での日本ハム戦だった。「本拠地の川崎球場と違って、新緑に包まれた山形球場の雰囲気が私の硬さをほぐしてくれた」と著書で書いていることからも、当時の球場の雰囲気が今もしっかり残っていることを窺い知ることができる。
28年前、村田兆治は確かにこの地で200勝目を挙げたのだ。
ちなみに'89年の村田は、オールスターMVPに輝き、最優秀防御率のタイトルも獲得。そして、翌'90年に40歳で10勝を挙げながら引退する。
「私にはダンディズムがある。野球だけに限っていうと、強烈な美意識がある。余力を残してマウンドを去ることがエースの美学だと心得ているところがある」
仕事も恋愛も始めるよりも終わらせる方が難しい。誰だって理想より生活に追われ、その一歩が踏み出せずにダラダラ続けちまう。村田兆治は最後まで“マサカリ兆治”として剛球を投げ込み、己の美学を貫き綺麗にスパッとそのキャリアを終わらせた。自分が大人になるとその凄さが身に沁みるぜ……。
球場での、この「よっしゃー」を大事にしたい。
それにしても、野球界は一寸先はハプニングである。まさか2年前にCSファイナルで対戦した巨人とヤクルトが最下位争いをすることになるとは……。巨人は相変わらずの貧打で、ヤクルトは怪我人続出で寂しいスタメン。試合は7回表に長野久義のソロアーチが決勝点となり巨人が1点差ゲームを競り勝った。
それにしても、普段はあれだけ「今年は優勝はもう厳しい」とか嘆きながら、目の前で長野の一発が出た瞬間「よっしゃー!」と絶叫してしまうこの感じ。自分でもわけ分からへん。けど、この胸の奥底から溢れ出る「よっしゃー!」は大事にしたい。
テレビの前では冷めていても、せめて球場で熱くなりたいんだよ。
野球ファンは理屈じゃなく感情だ。