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攻撃だけでなく球際でも魅了せよ。
風間体制後の川崎、鬼木監督の要求。
text by
いしかわごうGo Ishikawa
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2017/07/12 07:00
浦和戦では中村がベンチに下がった後に長谷川竜也がゴールを挙げるなど、選手層の厚さも増した。悲願の初タイトルへ、機は熟している。
切り替えの早さ、球際の強さを要求し続けるように。
とはいえ、これだけポジションを崩して攻撃に出て行くと、当然ながらリスクもある。流動的に攻めている分、ボールの失い方が悪ければ、ピンチにもなりかねない。
しかし今季の川崎は守備も安定している。第18節を終えて1試合平均1失点を割る17失点で、リーグ4番目の少なさだ。
そこは今季から指揮を執る鬼木監督の手腕と言えるだろう。
鬼木監督はシーズン当初から、チーム全体に球際の強さや切り替えの早さを要求し続け、これが選手に浸透。ボールを保持してゲームを進められる強みを維持しながらも、ボールを失った局面での前線の守備意識と強度を向上させた。
その守備を最前線で支えている存在が、ワントップの阿部とトップ下の中村である。阿部はガンバ時代から献身的な守備に定評があったが、彼が流れを読みながら前線からボールを奪いに行くことでメリハリのついたディフェンスができており、阿部に連動する中村も、精力的なプレッシングを欠かさない。
一気に守備で圧力をかけて主導権を奪い返せる。
「解説の戸田さん(戸田和幸氏)が褒めてくれていた。俺の守備を褒めてくれる人はなかなかいないから、すごく嬉しかったですね(笑)。自分のところでボールを取れないのはきついけど、それで後ろが助かっているのなら良い。体力を持たせる気がないし、よく(プレスに)いくなと思う」
中村はこう笑って話していたが、運動量が落ちた終盤には家長昭博が控えている。中村自身も思う存分、守備でも走れるというわけだ。
実際、前線の守備から流れを引き寄せる試合も増えている。
前節・鳥栖戦では谷口彰悟のゴールで1-2と追撃すると、再開後のキックオフで川崎は猛プレスを開始。鳥栖がたまらず青木剛までボールを下げたところに、阿部が詰めていく。次の瞬間には、ボールを受けたキム・ミンヒョクに対して中村が激しくチェック。うまくロングボールを蹴らせてセカンドボールを回収し、再びボールを握る展開に持ち込んだ。同点弾が生まれたのはその直後の攻撃だった。
相手の動揺を見逃さず、行けると判断したら一気に守備で圧力をかけて主導権を奪い返す。そういう戦い方も身につけつつある。