JリーグPRESSBACK NUMBER
攻撃だけでなく球際でも魅了せよ。
風間体制後の川崎、鬼木監督の要求。
text by
いしかわごうGo Ishikawa
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2017/07/12 07:00
浦和戦では中村がベンチに下がった後に長谷川竜也がゴールを挙げるなど、選手層の厚さも増した。悲願の初タイトルへ、機は熟している。
ホーム等々力も攻撃以外で歓声が沸くように。
鬼木体制となり、チームは着実に変貌を遂げつつある。しかしその手応えを指揮官に聞くと、「今、段階としては(守備の)意識も良くなってきているし、それはすごくあると思います。でもこれに関しては、ここまでで良いというのはないし、まだまだ上がある」と満足していない様子だった。
視線の先に見据えていたのは、さらなる高みであるからだ。
「自分たちはどこを目指すのかといったら、J(リーグ)だけなのか。今、アジアで戦っている中で、アジアでタイトルを取ろうとなったら、もっとこだわらなくてはいけない。その後の先があるのならば、それも意識しないといけないですよね。ここからもう1つ、もう2つ、まだまだ先がありますから」(鬼木監督)
これまで川崎の試合はその圧倒的な攻撃力ゆえに劇的な試合が多く、ときに「等々力劇場」と言われていた。ただ最近は、試合中のスタジアムの反応も良い意味で変化しつつあるという。2009年から在籍している登里が、こんな風に語ってくれた。
「攻守の切り替えだったり、球際のところで魅了する。等々力でやっていても、攻撃だけではなく、攻守の切り替えで奪った時でも観客の盛り上がるところが変わってきていますね。そういう魅せ方が出て来ていると思います。戦う集団になってきているし、それはオニさんがずっと言い続けてきていることでもある」(登里)
2点ビハインドの鳥栖戦で鬼木監督がかけた言葉。
――強い者が勝つのではない。勝った者が強いのだ。
ドイツの「皇帝」ことフランツ・ベッケンバウアーの名言である。
勝ちにこだわるということ。例えば0-2で迎えた前節鳥栖戦のハーフタイム、鬼木監督からのこんな言葉で心に火がついたと複数の選手が証言する。
「こういう試合を勝つことが優勝争いをする上で必要だし、お前らの力ならば絶対にこの試合に勝てるぞ、と言われました。選手としても、信頼されていると思ったし、やってやろうと奮い立たせられた」(小林)
「オニさん(鬼木監督)が『絶対にひっくり返せる』と言っていた。信じて頑張ろうと思ったし、気持ち的にはそれほど悲観せずにやれました」(大島)
その言葉を信じて戦ったチームは2点差を追いつき、そして最後にはひっくり返した。
戦う集団になりつつある川崎フロンターレ。若き指揮官の下、勝ち続けることで「うまいチーム」から「強いチーム」にも変わりつつある。