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駅伝を経由せず、選んだ五輪直行。
“世代最強”遠藤日向の異端ルート。
text by
別府響(Number編集部)Hibiki Beppu
photograph byAFLO
posted2017/07/03 07:00
遠藤は住友電工HPで2017年の目標を「3年後のオリンピックに向けて今年はしっかり土台を作っていきたい」としている。
“世代最強”ランナーが大学進学を選ばなかった理由。
“世代最強”。
それが、周囲が遠藤を語るときの枕詞だった。
高校1年生の国体3000mで優勝すると、2年、3年では5000mを連覇。インターハイでも5000mで2年連続日本人1位。3年生の時には1500mで優勝している。記録会を除くと、競技会で同世代相手に負けたのは都道府県対抗駅伝での2回だけだという。国際舞台も'15年の世界ユース、'16年のU-20世界選手権に出場し、世界ユースでは5位入賞を果たしている。
記録面でも3000mでの日本高校記録を持ち、5000mでも13分台を史上最多の7回記録するなど、過去をみても傑出した選手であることは間違いない。
これだけの実績のある選手である。
もちろん多くの大学の指導者が勧誘に訪れた。その選択肢は、無数にあったと言っていい。それでも遠藤が選んだのは、注目度の高い大学駅伝があり、学位も手にできる大学への進学ではなく、実業団の住友電工だった。
覚悟が違うアフリカ勢と東京五輪で戦っていくために。
その理由は、前述の世界大会での経験にある。
「世界で戦ってみて思ったのは、アフリカ勢は“覚悟”が違う。命を懸けて走る選手との壁を感じました。世界ユースでは5位入賞だったのに、U-20世界選手権では入賞できなかった。3年間の間に、世界との差がどんどん開いてしまっていたんです」
もうひとつ大きかったのが、2020年の東京五輪が決まったことだ。
「東京がなければ大学への進学も考えていたと思います。でも、あと3年で五輪ということを考えると、駅伝と五輪の両立は自分には難しい。駅伝は嫌いではないですけど、やっぱり五輪に出たいですから。(住友電工の)渡辺(康幸)監督の熱意にも心を動かされました」