卓球PRESSBACK NUMBER
徹底マークの平野、不調脱した伊藤。
世界卓球の「みうみま」を徹底検証。
posted2017/06/07 17:00
text by
高樹ミナMina Takagi
photograph by
Itaru Chiba
年に一度のビッグイベント、卓球世界選手権(5月29~6月5日)が熱狂のうちに幕を閉じた。今年の舞台は独デュッセルドルフ。ドイツの卓球人気は世界的に見ても高く、会場のメッセ・デュッセルドルフは連日、大入りの観客で賑わった。
今大会の注目選手には、世界王者の中国や地元ドイツ勢に加え、日本の平野美宇(JOCエリートアカデミー/大原学園)がいた。
平野といえば4月のアジア選手権女子シングルスで、世界ランク1位の丁寧ら中国の上位3選手を破り、史上最年少記録の17歳で優勝したのが記憶に新しい。
この快挙は世界の卓球界に衝撃を与え、「ハリケーン平野」の異名をとった。世界選手権を迎えたドイツにも平野の評判は届いており、大会初日の地元紙は「平野美宇、中国にとっての悪魔」の見出しで一面を割いて、平野と中国人選手の対決にスポットを当てた。
毎年、個人戦と団体戦が交互に行われる卓球の世界選手権だが、今年は個人戦が行われ、シングルスとダブルスに出場した平野はシングルスで銅メダルを獲得した。アジア選手権の雪辱に燃える中国とは準決勝で丁寧と対戦し、軍配は丁寧に。
しかし、平野は同種目における48年ぶりのメダルを日本にもたらし、またひとつ卓球界の歴史を塗り替えた。
平野美宇の長所を徹底的に消してきた中国勢。
彼女にとって、今回の世界選手権は本当の実力が問われる大会だったといえる。アジア選手権の快進撃には中国が平野をノーマークだったという背景もあり、全力でぶつかってくる中国に勝ってこそ、その強さは本物と認められるからだ。
一方の中国はアジア選手権以降、平野攻略に全力を挙げてきた。一説には彼女のプレーを真似たコピー選手を複数人作るなどして、研究と対策を重ねてきたとも言われている。もちろん日本側もそれを見越して戦術を立て、平野自身が「これまでで一番追い込んだ」という練習量を積んで大会本番に臨んだ。
しかし、本気の中国は手強かった。
丁寧はまず、平野の代名詞である超高速ラリーを避けようと、直線的なスピードボールではなく回転量の多いドライブボールを駆使し、平野の打球の威力を殺して、球威の弱まったボールを叩いてきた。
さらにアジア選手権で丁寧からポイントを奪った鋭いハックハンドを打たせまいと、平野のフォア側や台上にボールを集めた。その戦い方は徹底しており、ベンチコーチに入った日本代表の馬場美香監督は、「平野の一番の特徴であるバックハンドをほとんど使わせてもらえなかった。バック側に来るとしても、平野を大きく動かして体勢を崩してからだった」と話している。