“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
名波監督「高原、柳沢、城より……」
英才教育の小川航基が持つ才能。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2017/05/12 08:00
チャンスを多く作りながらも無得点に終わった札幌戦後、名波監督は会見で「7、8割の力でシュートを打つべき」との助言も送っている。
前線で起点になる大事さを、本当に実感してきた。
昨季は、小川にとっても名波監督にとっても、我慢の1年間となった。
だが今季、その両者の粘りが「劇的な成長」となって実を結び始めていた。
「前線で起点になるということがどれだけ大事かということを、本当にここ最近になってやっと分かってきた。逆にそこで起点になれなかったり、ボールロストをしてしまうと、どれだけチームとして痛手になるかも。それが理解できるようになってきました」(小川)
中盤に落ちてワンタッチで周りにボールを配ってから、反転してスプリントでゴール前に走り込んで行く回数が明らかに増えた小川。DFを背負いながら、クサビを受けてタメを作り、サポートに来た味方に預けると、ただゴールに向かうのではなく、DFの死角に一度入ったり、ダイアゴナルランやウェーブの動きなど、多彩な動きから点を獲るべきポジションに入り込んでいくようにもなっていた。
そして徐々に、代表と同じように磐田でも活躍する時間が増えていった。
ルヴァン杯でハットトリック、評価も急上昇中。
3月15日のルヴァンカップ第1節の札幌戦でプロ初スタメンを果たすと、3月18日のJ1第4節の神戸戦で途中出場ながら待望のリーグ戦デビュー。4月26日のルヴァンカップ第3節のFC東京戦では、プロ初ゴールとハットトリック(ナビスコ、ルヴァンを含め、大会最年少ハットトリック記録)を同時に達成。
リーグ戦でもコンスタントに出番を得るようになった。
そして、U-20W杯前の最後の磐田での試合。ルヴァンカップの静岡ダービー。
スタメンフル出場を果たした彼は、立ち上がりから何度も前線で動き回って顔を出し、味方のボールを引き出すなど、見事に攻撃全体のリズムを作り出していた。
自身のシュートでは、27分の胸トラップからの強烈なボレーシュート(GKのファインセーブに阻まれる)、63分の滞空時間の長いヘッド(僅かにゴール右外)、後半アディショナルタイムのDF2人を背負いながら強引に前を向いてのシュート(DFにブロックされ、CKを獲得)など、大いに見せ場を作っていた。
彼の90分間のプレーに対し名波監督も納得の表情を浮かべ、こう振り返っていた。
「ストライカーが当たり前のようにやらなければいけないことを、やろうとしてできているのではなく、オートマチックにできるようになってきた。小川のファーストアクションが、次の選手の動き出しに繋がり、さらにその次の選手の動きのイメージまで湧いてくるなど、周りの選手にも波及し始めている。そういった良い連鎖が彼から生まれていくようになった。
それにね、あいつの良いところはシュートバリエーションの多さ。
シュートバリエーションでは(城、柳沢、高原の)3人よりも間違いなく多い。今日だって3本の違うバリエーションのシュートを打っているしね」