“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
洗練されたサッカー小僧・堂安律。
U-20W杯、ドリブルよりシンプルに。
posted2017/05/15 07:00
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
Takahito Ando
堂安律の進化が止まらない。
今の彼のプレーは昔と違い、より洗練され、ゴール前での存在感自体が脅威となっている。
G大阪の下部組織で純粋培養されてきた彼は、稲本潤一、宇佐美貴史、井手口陽介と並べ称される、G大阪育成アカデミーの傑作だ。
下部組織時代から左足の精度が高く、その左足から放たれる強烈なシュートはもちろん、ボールを持ったら迷うこと無く仕掛ける。時にはひとりでドリブルで持ち込んで、そのままゴールを奪って行くような、まさにピッチ上の王様だった。
堂々たる佇まいと、言いたいことはハッキリと言う性格、やんちゃなように見えるが、サッカーに対しては常に貪欲で、純粋に向き合う。まさに根っからのサッカー小僧である。
筆者は彼が16歳の頃から取材をしているが、彼と話しているとインタビューをしているつもりが、いつの間にかサッカー談義へと変わっていることがある。ミックスゾーンで話を聞いた後、最後の言葉はいつも「またサッカー談義をしましょうね」というもので、その笑顔を見る度に「本当にサッカーが好きで好きで仕方がない選手だな」と微笑ましい気持ちになる。
昨年までは「自分が打開しないと」とこだわっていた。
今年に入ってから彼とのサッカー談義、そして彼自身のプレーを通じて、大きな変化が感じられるようになった。昨年までは「自分が積極的に仕掛けて、自分が打開しないといけない」というこだわりを持っていた。それは彼が培ってきたプレースタイルで、象徴的だったのが2014年のAFC U-16選手権だ。
バンコクで開催されたこの大会、堂安は左サイドバックとしてプレーした。しかし彼に与えられたミッションは、守備的ではない“超攻撃的サイドバック”というもの。U-16日本代表を率いていた吉武博文監督(現・FC今治監督)は、「サイドバックが得点王」とまで話しており、堂安を左サイドバックに置いたのも、彼の強烈な個人能力に期待してのことだった。