“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
名波監督「高原、柳沢、城より……」
英才教育の小川航基が持つ才能。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2017/05/12 08:00
チャンスを多く作りながらも無得点に終わった札幌戦後、名波監督は会見で「7、8割の力でシュートを打つべき」との助言も送っている。
なぜ、ゴールを純粋に目指しちゃいけないんだ?
桐光学園や、内山篤監督が指揮する年代別代表チームでは、「ゴール前での勝負を求められてきた」と本人が語るように、すぐに点を奪えるポジションに居続けることが彼の大きな役割でもあった。しかし、磐田では積極的に中盤の組み立てに参加し、かつゴールを決めないといけない。
当然、多くの運動量を求められ、「ゴールを奪うことだけを考えればいい」とはいかなくなる。いろんな考えが頭を巡るうちに、しばしば「なぜ、ゴールを純粋に目指しちゃいけないんだ」という疑念までも頭に浮かんでしまうことも。
この迷い、疑念が徐々に本来の動きをも鈍らせる……昨年の小川はまさにこの負のスパイラルに完全にハマっていた。
その姿を見ていたU-20日本代表の内山篤監督も、「小川は間違いなくこのチームのエース。まずはここ(代表)では結果重視。中盤に下がってプレーすることを要求していない。よりゴールに近い位置で決定的な仕事をして欲しい。ただ、彼の将来を考えると、もっとやれることを増やさないといけないのも間違いない」と、磐田での壁を自らの力で打ち破ることを期待していた。
探究心旺盛だけど、ボックス内での我が強すぎた。
代表では不動のエース。だが、磐田では試合に出られない。
小川がギャップに苦しんでいるのは名波監督も分かっていた。
「あいつは学ぶ心、探究心も旺盛だけど、ボックス内での我が強すぎた。DFの間に立って『ここに出せ! ここに出したら全部決められる!』という主張をしてしまっていた。でもね、そんな甘いことはほとんど無いし、そんなんじゃ1本もシュートを打てないままで終わってしまうかもしれない。それに気付かせないといけなかった」
常に厳しく接する名波監督のアドバイスに対し、小川も徐々に考え方を変え始めた。
「苦しかったけど、このままでは良くないことはずっと自分でも分かっていた。組み立てに関わりながらも、ゴールから遠ざかって行くのではなく、近づくべき時は必ず近づく。両方できるようにならないと、先の成長には繋がらないことも。自分はどちらもできると信じていたし、何とかそうなるように考えてみた」