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5冠・池江璃花子はフェルプス級か?
伊藤華英が考える「次世代スイマー」。
posted2017/04/17 12:05
text by
伊藤華英Hanae Ito
photograph by
Sho Tamura/AFLO SPORT
「絶対誰にも負けない」
池江璃花子選手はインタビューになると、決まってこのワードを出す。今や日本競泳界において最も注目される選手のひとりになったわけだが、中学生の時から「『負けたくない』という言葉をずっと話してきた選手」という印象が続いている。
彼女は、今回の日本選手権で50m、100mのバタフライ、そして50m、100m、200mの自由形の計5種目で見事優勝を飾った。これだけの多くの優勝を果たした選手は、日本競泳界の女子選手では初めての存在だった。
とにかく、マルチでタフなのである。
彼女の泳ぎの特徴は「身体の柔らかさ」だ。特に、肩甲骨が素晴らしい。
水中カメラの映像を確認してみると、手が入水した時、水中に泡がたたない。水を掴む感覚は天賦の才を感じられずにはいられない。
男子だと、萩野選手、瀬戸選手がマルチ・スイマー。
彼女のようなマルチでタフなスイマーには、今までどんな選手がいたのか。
世界に目を向けてみると、池江選手のように自由形だけではなく他の種目に出場している選手が多くいる。日本でも、萩野公介選手が背泳ぎ、瀬戸大也選手がバタフライにチャレンジするなど、今ではごく普通のこととなっている。彼らの特徴は、単に出場しているだけなくすべての種目で結果を残しているということだろう。
強く印象に残っている大会は、2001年福岡の世界選手権である。
キャリアを通じて五輪金メダルを23個も獲得するに至ったマイケル・フェルプス選手だが、当時はまだ世界規模の大会では優勝の経験が無かった。この大会で彼は、世界新記録で200mバタフライで優勝していた。
その夜、平井伯昌コーチが不意に「ダウンプールで平泳ぎの練習をフェルプス選手が行っている」と、妙なことを言ってきた。
私は「バタフライの選手が、なぜ?」と不思議に思ったのを覚えている。