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5冠・池江璃花子はフェルプス級か?
伊藤華英が考える「次世代スイマー」。
text by
伊藤華英Hanae Ito
photograph bySho Tamura/AFLO SPORT
posted2017/04/17 12:05
今年から「世界大会でメダルを取る」という、ひとつ上の意識で泳ぎ始めたという池江。7月にハンガリーで開催される世界水泳では世界の頂点を目指す!
「一流選手は1種目を極める」というのが当時の常識。
それまで競泳選手は、「特定の1種目をとことん追求していく」というのが常識だった。ごく稀に数種目でエントリーする選手もいたが、世界の一流選手はたいてい種目をひとつに定めていた。
フェルプス選手が、200mバタフライで優勝した直後にもかかわらずクールダウンで平泳ぎの練習をしていた理由は、翌年明らかになる。
フェルプス選手は、次の年から個人メドレーにもエントリーしたのだ。400m個人メドレーの種目では、未だに世界記録保持者だ。
他にも、フェルプス選手のライバルであった米国のライアン・ロクテ選手は、もともと背泳ぎの一流選手だったが、個人メドレー、自由形とチャレンジし続け、数々のメダル獲得を果たしている。
マルチなスタイルの時代に現れた、新時代の選手。
1種目が終わってもその水着を着替えずに、そのまま2種目めのレースに行く選手の姿も、2002年以降は多く見られるようになった。
「これからの時代、もしかするとこのマルチなスタイルが成功の条件になるのでは……」
出場するほとんどの種目で彼らが結果を残していく光景を見て、私もそんなふうに考えたものだ。
池江選手は2000年生まれ。シドニーオリンピックの年に生まれた、マルチな競泳選手が多く活躍するようになった新時代の選手である。
「自由形で決勝に残りたい」
この去年の目標も、きっと変化していることだろう。
歴史のバトンは引き継がれ、そこから再び加速していく――今までの常識が非常識になり、非常識だったものが常識になっていく。池江選手は、今、その先頭に立っているのである。