Jをめぐる冒険BACK NUMBER
俊輔が空けて、誰がそこを使うのか。
ジュビロの「話し合い」が始まった。
posted2017/03/02 11:00
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph by
J.LEAGUE PHOTOS
そこを、誰が、使うのか――。
しばらくの間、これが中村俊輔を迎え入れた“名波ジュビロ”のテーマになりそうだ。
「そこ」とは俊輔が空けたトップ下のスペースのこと。「誰」とは俊輔の近くでプレーするボランチや両サイドハーフのことだ。
2月25日に行われたJ1リーグ開幕戦。俊輔加入で注目の集まるジュビロ磐田は、J1に復帰したばかりのセレッソ大阪に対して、0-0の引き分けに終わった。
シュート数はC大阪の9本に対し、磐田は7本。名波浩監督が「よく勝点1をもって帰れたなというゲーム」と語るほど劣勢とは感じなかったが、磐田にとって不本意な出来だったのは確かだろう。俊輔もまた「やりたかった攻撃の半分もできなかった」と振り返った。このゲームで浮かび上がった課題のひとつが、冒頭のものだった。
自陣に引いて構え、慎重にゲームを進めるC大阪に対して、磐田は俊輔がボランチの近くまで下がって積極的にボールに触り、攻撃を組み立てようとした。
ところが、1トップの川又堅碁が孤立してしまい、決定的なチャンスが作れない。そんな状況が、特に前半はやけに目立った。
俊輔が降りた時に、周囲がどう連動するか。
俊輔が下がりすぎるとの指摘もあるかもしれないが、1本のパスで局面を変えられる俊輔がボールに多く触ったほうが相手にとって厄介なのは間違いない。
むしろ問題は、俊輔が下がったときにどうするか、だ。俊輔のマークに当たる山口蛍は付いて来ているのか否か、数的優位はどこで生まれているのか、代わりに誰がトップ下に入れば相手を混乱させられるのか……。
俊輔が何を狙って降りているのか、その頭の中まで覗けるようになれば、技術の高い川辺駿や松本昌也、松浦拓弥あたりが、いっそう輝きを放てるはずなのだ。それこそ、名波監督が狙っている「1+1が2以上のものになる」瞬間だろう。