Jをめぐる冒険BACK NUMBER
俊輔が空けて、誰がそこを使うのか。
ジュビロの「話し合い」が始まった。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2017/03/02 11:00
ジュビロの攻撃は、加入した中村俊輔が早速司令塔の位置に収まっている。彼のビジョンを共有することは、若手にとっても成長の契機になるはずだ。
両チーム通じて最長の走行距離を記録した俊輔。
実は、この試合で最も長い距離を走ったのが、ほかでもない俊輔だった。その距離は12.637キロ。12キロ以上走ったのも、両チームを通じて俊輔しかいなかった。
俊輔はなにも、プレミアリーグのセントラル・ミッドフィールダーよろしく「ボックス・トゥ・ボックス」で走り回ったわけでも、ブンデスリーガの攻撃陣のように二度追い、三度追いしてボールを奪い取ったわけでもない。
実際、スプリント(時速24キロ以上のダッシュ)数は9回で、これは磐田のスタメンの中ではGKカミンスキーの1回、アダイウトンの8回に次ぐ少なさだった。
それなのに、最長の走行距離をマークしたのは、ボールサイドに積極的に顔を出したり、こまめにポジションを取り直したり、味方のサポートに頻繁に向かったりと、細かい動きを積み重ねた結果と言える。
本来なら、その動きに応じて周りの選手も常に動く必要がある。そうすれば、チーム全体の走行距離も自ずと伸びていくはずで、俊輔の走行距離が目立つのは、まだまだ攻撃のイメージが共有されていないからだろう。
名波監督「今の選手は全然話し合わない」
とはいえ、“名波ジュビロ”の進化は、始まったばかり。ポジティブな面も見えた。そのひとつが、試合終了後の光景だ。ホイッスルが吹かれると松浦がすぐに俊輔を掴まえ、身振り手振りで意見交換をすると、ピッチから引き上げる際にも川又と俊輔が、川辺と俊輔が話し合っていた。
名波監督が以前、こんなことを言っていた。
「今の選手たちは全然、話し合わないんだよ。俺たちの頃はしょっちゅう、ああでもない、こうでもないって話し合っていた。そうやって約束事とかあうんの呼吸というものを築き上げていったんだから」