福西崇史の「考えるサッカー」BACK NUMBER
黄金期の磐田も、浦和もハマった。
福西が語る「大一番の鹿島」の怖さ。
text by
福西崇史Takashi Fukunishi
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2016/12/05 17:00
中田浩二に小笠原満男……百戦錬磨の鹿島には、「N-BOX」で黄金期を迎えた磐田も苦しめられた歴史がある。
“行くか、行かないか”の判断が試され続けた。
鹿島は伝統的に、状況に応じて戦い方を柔軟に変化させるのが上手い。それにプラスして“最後に失点しなければ、ある程度相手にプレーさせておけばいい”というメンタリティが厄介なんですよ。チーム全体が意思統一して、集中力を切らさない。だから守備でも崩しどころがなかなか見つからないんですよね。
ジュビロはボール保持率を高めて攻撃を仕掛けるスタイルだったからこそ、特に攻守バランスは気をつけないといけなかった。ゴール前に人数をかければチャンスは増える。でも自分のようなボランチの選手まで前がかりになると、カウンターを食らうリスクがある。
だからこそ「この状況で守備の人数は足りているのか?」とか「この選手が誰にもマークしづらいポジショニングを取っている。カウンターを狙っているんじゃないか」と感じたら、攻撃参加せずに残るケースもありました。勝つためには得点を取りに行かなきゃいけない。でもバランスを崩したら鹿島がスキを狙ってくる。この“行くか、行かないか”の判断がとにかく試されるんです。
浦和に芽生えた“追加点が欲しい”という気持ち。
そう考えると、今回の浦和は“追加点が欲しい”という気持ちが強くなりすぎたのかもしれません。特にサイドの選手の意識が前にいっていた。浦和の攻撃は、サイドハーフに加えて3バックの槙野や森脇が攻め上がって、相手を押し込んでいきます。ただ第2戦では、結果的に鹿島に狙いどころを与えたかなとも感じました。
第1戦だと槙野が守備に意識を置くなど我慢して無失点で切り抜けた。そして第2戦でも早めに先制したからこそ、ドローでもいいくらいの気持ちで、鹿島を焦らせた上でカウンターを仕掛けてもよかったんじゃないか。鹿島からは浦和のカウンターを嫌がっていた印象を受けましたしね。