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今も、横断幕の話をする目には涙が。
李忠成が「浦和の一員」になるまで。

posted2016/12/06 17:00

 
今も、横断幕の話をする目には涙が。李忠成が「浦和の一員」になるまで。<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

五輪で興梠慎三が離脱する時期もあるなか、二桁得点を決めて年間勝ち点1位に貢献した李忠成。浦和との幸せな関係は彼の努力の賜物である。

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轡田哲朗

轡田哲朗Tetsuro Kutsuwada

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Kiichi Matsumoto

 帽子を深々とかぶって、クラブハウスから荷物を運び出す。その目は涙ぐんでいた。

 浦和レッズは3日のJリーグチャンピオンシップ第2戦で鹿島アントラーズに敗れ、アウェーゴール数の差でチャンピオンの座を逃した。そのため、翌日がチームとしての今季の活動最終日となった。選手たちはオフに必要な荷物などを整理し、クラブハウスから自分の車へと積み込んでいく。シーズン最終戦となったゲームで出番が訪れなかったFW李忠成にとっても、それは同じだった。

 段ボールに入れたトレーニング用のシューズや着替えなどを運び出しながら、鼻をすすりあげるような音も聞こえた。無念さがどこまでも伝わってきた。

 敵地で1-0の勝利を収めた11月29日の第1戦で、李は間違いなくチームの勝利を引き寄せた主役の1人だった。前線で何度となく体をぶつけながらボールをキープし、ピッチに倒れ込んでも起き上がってプレーを続けた。試合終了間際の疲労がピークの時間帯に、カウンター攻撃を受けそうな場面では自陣まで全力疾走してピンチの芽を摘んだ。試合後には「今日、眠れるか心配」と言うほど、体中に痛みを感じていた。

李「自分はスーパープレーヤーじゃないから」

 その痛みは、現実的なダメージを伴っていた。第2戦の前日練習で、李は紅白戦を半分だけで切り上げた。ミハイロ・ペトロヴィッチ監督に、息苦しさを示すようなジェスチャーで何かを伝えた。ホームでの第2戦ではスタメンに彼の名が無かった。チームは後半26分に交代枠を使い切ったが、同34分に勝ち越しゴールを許し、浦和はDF槙野智章を前線に上げてパワープレーを仕掛けた。

 ベンチの前で声を張り上げて仲間を鼓舞する彼が、ピッチの上にいれば――。

「出たかったけど……。肋骨がいっちゃってました(骨折)から。薬を飲んだらだいぶ良くなって動けた感じはあったけど。(第1戦の)終盤に曽ヶ端選手とぶつかったところですね。呼吸するだけで痛いしね。(前日練習も)できなかったから。

 自分にとってもあの舞台に立てなかったことは残念だった。ケガもあったし、なければ最初から出ていたと思う。(第2戦のチームが)戦えていなかったから、プレーでメッセージを与えられたらという思いはありましたね。自分はスーパープレーヤーじゃないから、1戦目みたいな感じで、プレーでメッセージを与える選手だと思う。それができれば、違う展開になっていたのかもしれない」

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