Jをめぐる冒険BACK NUMBER
鹿島、「理想のサイクル」の証明。
タブーなき積極采配と勝利への渇望。
posted2016/12/05 11:55
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph by
Kiichi Matsumoto
鹿島アントラーズのキャプテン、小笠原満男の表情には、やはり笑みがなかった。
11月23日のチャンピオンシップ準決勝を終えたあと、小笠原は険しい表情で反省の言葉を口にしたあと、「次、負けたらなんの意味もない」と言って取材を終えた。
12月3日、浦和レッズとの激闘を制してリーグ優勝を果たしたあとのミックスゾーンでも、キャプテンに笑顔はなかった。あったのは戒めの言葉であり、次なるタイトルへの渇望だった。
「勘違いしちゃいけないのは、このチームは勝負強いわけではなくて、一生懸命練習して、試合でも必死に戦って勝ってきたチームだということ。勝負強いから勝てるほど、この世界は甘いものじゃない。やっぱり謙虚に努力しないといけないし、いつでも勝てるとは限らないので、そこを履き違えてはいけないと思う」
実に14ものタイトルに貢献した男の重たい一言。
「勝負強い」と言われることに対して疑問を呈したキャプテンは、クラブの未来を担う若者たちに対しても、重いメッセージを送った。
「これで浮かれるのか、もう1回あのピッチに立ちたいと思って歯を食いしばって頑張れるか、その差は大きいと思うので、タイトルを取ったあとがすごく大事。まだクラブワールドカップ、天皇杯とあるし、来シーズンもある。タイトルを取り続けるのがアントラーズ。ここで満足しちゃ絶対にダメだと思います」
勝ち取ってもなお尽きない、タイトルに対する飢え――。その快感を知っているからこそ、貪欲であり続けるのだろう。
「何個取ってもまだ取りたいっていう欲があるし、欲張りなのがこのチームの良さなので、次も次もって。天皇杯も取りたいし、クラブワールドカップも取りにいきたいし、来シーズンは年間1位、そしてACLもあるので、どんどん取って行きたいと思います」
チームが獲得した18個のタイトルのうち、実に14個の獲得に貢献してきた男が、それでも貪欲にタイトルを欲して先頭を走り続けている。その背中を追えるのは、若い選手たちにとって何物にも代えがたい財産に違いない。