“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
インハイ決勝、市船が死闘を制す。
攻勢の流経柏が感じた「怖さ」とは?
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2016/08/03 17:30
主将の杉岡らを中心に歓喜を爆発させる市立船橋イレブン。プレミア、選手権の3冠への挑戦権を手に入れた。
「激しく戦わないと絶対に追いつかれると思った」
後半に入ると、流通経済大柏はさらに前への圧力を強めて来た。そこには鬼気迫るものがあった。
しかし市立船橋も簡単には屈しない。
「こういう試合だからこそ、ボランチが運動量を落としてはいけない。相手にセカンドボールを自由に拾われたら、ペースを完全に持って行かれる。頭は冷静にしながらも、激しく戦わないと絶対に追いつかれると思った」と、プロ注目の1人である市立船橋MF高宇洋が語ったように、MF金子大毅、杉岡と原、そして高が中心となって、流通経済大柏の気迫に負けず必死の応戦をしたことで、試合はさらにヒートアップしていった。
終了間際、同点弾かと思われたがゴールライン上で……。
残り10分になると、流通経済大柏の攻撃はまさに『猛攻』となった。後半34分に右サイドで交代出場のMF宮坂昂輝と1年生DF佐藤輝が猛プレスを仕掛け、ボールを奪うと、佐藤のクロスを途中出場のFW河西守生がヘッドで合わせるが、僅かに枠外に逸れた。
そして後半アディショナルタイム、流通経済大柏に最大のチャンスが訪れる。左からのクロスに、市立船橋GK井岡海都と、流通経済大柏の関川と河西が競り合う。関川が競り勝ってGKの背後にこぼれたボールに、先に到達したのは河西だった。無人のゴールに押し込むだけ……と思いきや、ゴールライン上に原が現れ、河西の執念のシュートを、こちらも右足で執念のブロック。流通経済大柏は千載一遇のチャンスをフイにし、市立船橋は絶体絶命のピンチを防いだ。その直後にも流通経済大柏は絶好の位置でFKを獲得したが、菊地が放ったFKは、GK井岡が今度はガッチリとキャッチ。試合は終焉の時を迎えた。
ピッチ上に倒れ込む流通経済大柏の選手たち。控え選手もピッチに飛び出して喜びを爆発させる市立船橋の選手たち。無情なコントラストは、まさに決勝が『死闘』であったことを物語っていた。