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森繁和の心の奥には根本陸夫が――。
中日に実力派ドミニカンが集まる理由。
text by
伊藤哲也Tetsuya Ito
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2016/06/21 11:00
対戦前、千葉ロッテのドミニカン、ヤマイコ・ナバーロと会話する森ヘッドコーチ。
「性格は大事。日本球界を舐めてる選手は成功しない」
メジャーのロースターに入るか否かのボーダーラインの選手にとって、ウインターリーグは今も格好の売り込みの場。近年は、日本球界や韓国球界が1億円以上の提示をするケースも少なくない。
そんな背景から、過酷な米国のマイナーで過ごすより、日本や韓国で大金を稼ぎたい中南米の選手が増えてきている。
半面、日本球界を、下に見る選手が多々いるのも確かだ。
「性格は大事。日本球界を舐めている選手は、絶対に成功しない」
森ヘッドコーチの、絶対にブレない持論である。
それを見極めるために、興味を持った選手と時として食事をともにすることもあるという。その時に、約束の時間に遅刻することがないかもチェックする。些細な部分でも見逃すことなく性格面を把握し、そうしてようやく条件面の交渉に乗り出していくのだ。
しかし裏返せば、強いハングリー精神を持った男には、実績がゼロに等しくてもチャンスを与えるということ。
それが結実したのがマキシモ・ネルソン(2008-2012)だった。
サトウキビをかじりながら出てきた男。
2007年、中日のブルペン捕手兼通訳のルイス・フランシス(ドミニカ出身、元広島)の紹介もあり、森ヘッドが現地で入団テストを実施した。
当時のことを、懐かしそうにこう話す。
「球場を借りて待っていたら、原っぱの中から、短パンTシャツの背が高い男がサトウキビをかじりながら来た。ルイスに『おい、アイツじゃねえだろうな』って確認したくらい(笑)。投げれるのか、って聞いたら、投げれるって言う。そしたらキャッチボールもせずに150キロ近い剛速球。ネルソンは『日本に行くというより、とにかく何か食わせてくれ』って言ってたわ」
ネルソンに日本行きの切符を渡すと、2008年から3年間かけて変化球、クイック、フィールディングなどを徹底して再教育。それが実り2011年には2桁勝利を飾り、リーグ優勝に大きく貢献した。