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緊張感も危機感も感じられず……。
トゥーロン惨敗、五輪選考の行方は?
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byMEXSPORT/AFLO
posted2016/05/30 17:00
防御の要となるDFのリーダー植田直通。試合後、4ゲームすべてで失点した事実に対して「こんなんじゃ五輪は戦えない」と厳しいコメントを残した。
4試合中3試合は開始25分以内に先制されている。
また、初勝利を挙げたギニア戦以外、3試合ともに前半25分以内に先制点をゆるすなど全4試合で5失点し、失点のほとんどがミス絡みだった。それを「コミュニケーション不足が問題」と植田は言ったが、何度も同じようなミスを繰り返して失点してしまうのはいったいどういうことなのか。まとめ役で主将の遠藤航が不在の影響もあるが、問題をなぁなぁにしては国際試合で勝てるわけがない。「本番ではちょっとしたミスが命取りになる」と手倉森監督は厳しい表情で言ったが、これがリオ五輪本大会でなかったことがせめてもの救いだった。
選手選考というサバイバルレースもどこか白けた雰囲気が漂っていた。まず、大会前から誤算がつづいた。トゥーロンのメンバーに入っていた最終予選の主力組である久保裕也、奈良竜樹を大会前にケガで失った。大会中には初戦のパラグアイ戦で同じく主力の岩波と亀川が負傷して離脱した。DF登録は本大会を想定して6名だったので、2戦目以降は残りの4名がフルに戦わなければならない状態になり、いろんなマッチングを試すことができなくなった。あとは個々の選手が世界相手にどんなプレ-を見せてくれるのか。チームの中でどれだけ機能できるのかにフォーカスされた。
緊張感や危機感が感じられなかった。
しかし、多くの選手、とりわけ新参組の選手の、「ポジションを奪い取ろう」という気持ちがプレーからは伝わってこなかった。選手は、チームにいれば自分の序列を察することができる。そのため最終予選組にはかなわないと半ば諦めていたのかもしれない。実際、試合でのプレーからはそういう雰囲気が感じられたし、それではチーム全体で「勝ちにいく」という空気を醸成するなど望むべくもない。最終予選の時にあったチーム全体から発する覇気は感じられず、サバイバルレース特有のピリピリした緊張感や危機感はほとんど感じられなかった。
それだけではない。
イングランド戦後、スタジアムでミックスゾーンが設けられず、ホテル前の駐車場がそこに設定された。するとホテルの部屋から「コラ、植田、コラ!」と叫び、真摯にプレス対応している植田を茶化す選手がいた。そういう選手が日の丸をつけた代表チームにいること自体情けないし、選手の意識の低さがうかがえる。