2016年の高橋由伸BACK NUMBER
巨人ファンはつらいよ――の理由。
高橋由伸監督を襲う試練と首位攻防。
text by
プチ鹿島Petit Kashima
photograph byHideki Sugiyama
posted2016/04/19 07:00
淡々と監督業をこなしているように見える高橋監督。「どんな逆境にも立ち向かい、覚悟を持ってまい進します」という引退時の言葉が思い出される。
糸井重里「僕は由伸監督の失敗が見たいんです」。
私は前回、監督1年目の今年こそ高橋由伸は見ておく価値があるのでは? と提案した。
心の準備をして監督になった人とはちがい、お家の事情でいきなり監督に就任した高橋由伸の2016年は不安定で未完成だ。しかも、選手としては天才だけど人としては「こっち側」に近いヨシノブ。意地悪かもしれないがこの壮大なるドキュメントを見逃す手はない。
「いろんな人がいろんな期待をしていると思うんですが、僕は由伸監督の失敗が見たいんですよ」と言ったのは糸井重里だ。
「何だろう。失敗したんだけど、ファンが『その気持ち分かる』って思いながら球場を後にする。『あれな~っ』と文句言いながら、『でも、オレでもそうしたかなあ』とか。そんなふうな気分で一体になれるチームが、久しぶりにできるような気がするんです」(高橋由伸&糸井重里対談 3月8日「スポーツ報知」)
糸井氏も高橋由伸の等身大っぽさを指摘してるのだろう。これに対し高橋は「僕はできれば失敗したくないんですけど(笑い)」と返した。でもやっぱり高橋監督はあの始球式直後まで「巻き込まれ由伸」だったことになる。高橋監督の硬い表情の挨拶は、こちらも同じく肩身が狭かった。「失敗したんだけど、ファンが『その気持ち分かる』」というまさに最初の例だったんだと思う。
“由伸野球”とはなんなのか?
いざプレイボールがかかると巨人は開幕4連勝した。由伸は現役時代と同じように、淡々と打席に入り、初球を淡々と打ち返した感じだ。
では“由伸野球”とは一体なんなのだろう。
かつての同僚である仁志敏久は「守備の意識も高い選手でした。二塁のボクと右翼の由伸であうんの呼吸というのがあった。2人の間には絶対に打球を落とさないぞ、という共通意識です。(略)その後、いろいろな右翼手と組みましたが、どうしても由伸を基準に考えてしまうので、正直、感覚が合う選手は少なかった。ディフェンスにもしっかり目がいく指揮官になると思います」(日刊ゲンダイ・3月25日発行)
そういえば開幕戦で印象的だったプレーがある。
2回表ヤクルト無死二、三塁。序盤のここは、「1点は仕方ない」という野球をよくみてきた。しかし6番・坂口の場面で巨人の内野陣は前進守備を敷く。結果は浅いレフトフライ、続く中村は二ゴロでクルーズが本塁で畠山を刺し無得点でしのいだ。翌日もまったく同じ場面があった。
「超攻撃的な守備」は監督としても高橋由伸の見どころのひとつかもしれない。