2016年の高橋由伸BACK NUMBER
巨人ファンはつらいよ――の理由。
高橋由伸監督を襲う試練と首位攻防。
text by
プチ鹿島Petit Kashima
photograph byHideki Sugiyama
posted2016/04/19 07:00
淡々と監督業をこなしているように見える高橋監督。「どんな逆境にも立ち向かい、覚悟を持ってまい進します」という引退時の言葉が思い出される。
理屈や正義を越えて「でも好きなんだよ……」。
世の中には誰がどう見てもツッコまれても仕方ない物件がある。だけど理屈や正義を超えて「でも好きなんだよ……」というとても不合理な理由も存在するのである。まずそれを自分自身で知った。
そして好きだからこそ「おかしいと思うときはおかしいと言う」という態度を学んだ。
ファンになるということは、喜びだけではなく、怒りや恥ずかしさや矛盾をも生むということなのである。その共存を認めるしかないという自問自答。巨人ファンはその覚悟を引き受けるしかない。あなたの親戚に巨人みたいなおじさんがいたらきっと同じ感じを抱くはずだ。呆れることは多々あるけど縁は切れないのである。
そんな巨人ファンは、今年の開幕を迎えるにあたってよりいっそう肩身が狭かった。もちろん野球賭博問題である。
せっかく「クリーンなイメージ」を演出したのに……。
3月25日。開幕戦のセレモニーで老川祥一新オーナーと高橋由伸新監督がファンに謝罪した。高橋監督は述べた。「厳しく、そして温かく支えてくださっている皆さまの期待を裏切らぬよう精いっぱい戦い抜きます」。5日前に東京ドーム外の広場で行われたイベントでも高橋監督は謝罪した。
高橋監督にしたら野球しかない。待ち焦がれたプレイボール! 始球式は男子バドミントンの桃田賢斗。さわやかだ。しかし桃田は闇カジノに出入りしていたというスキャンダルが後日発覚した。
ああ!
この始球式は親会社の読売新聞が主体となって「クリーンなイメージ」を最優先に慎重に人選がおこなわれたという。タレントよりも五輪のメダル候補がリストアップされて最終的に桃田が選ばれた。その結果がこれである。巨人は「賭け」に敗れてしまったのだ。
なんというドツボ。