2016年の高橋由伸BACK NUMBER
巨人ファンはつらいよ――の理由。
高橋由伸監督を襲う試練と首位攻防。
posted2016/04/19 07:00
text by
プチ鹿島Petit Kashima
photograph by
Hideki Sugiyama
巨人ファンとはツラい立場である。
は? おまえ何を言っているんだというあなた、まず聞いてほしい。
「どこのチームのファン?」と聞かれ「……巨人です」と答えると、野球がくわしいという相手ほど「ああ(笑)」という表情になる。私の経験で言うのだから間違いない。「巨人ファン=野球をよくわかってないミーハー」と断定されるのだ。
昭和のプロレスファンが世間から色眼鏡でみられる少数派のコンプレックスを抱えていたとしたら、巨人ファンにつきまとうのは多数派のコンプレックスである。そして私はどちらも経験済みである。こんな厄介なことはない。
決して多数派だから好きになったわけではなく、物心ついたときにテレビで見た王選手の凛々しさに惹きつけられたとか、口数少ない父親が唯一感情を熱くあらわすのが巨人だったから身びいきになったとか、そんなことを言っても通じない空気がある。
コンプレックスの理由はまだある。
「勝つことだけが好きなんだろ」という指摘である。
いくつもある、巨人ファンのコンプレックス。
私は少年時代('80年代)の巨人がとくに好きだった。「お嬢様野球」と呼ばれた頃だ。原、篠塚、吉村、江川……。他球団のファンからはエリートに見えたかもしれないが、応援する側からすれば勝負弱くておとなしくてじれったすぎた。だからやっと優勝にたどりつけたときは興奮したのである(日本シリーズで何度も西武にボコられたが……)。なので結果だけを求めているわけではないのです。
巨人ファンのコンプレックス、次が重要だが「圧倒的な権力者ではないか、あのふるまいは何だ」というアンチ巨人からのツッコミである。
巨人はドラフト破りをしたり、FA制度導入を唱えたり、ナベツネがいたり、「お前のモノは俺のモノ、俺のモノは俺のモノ」という、まさにジャイアンならぬジャイアンツのふるまいをしてきた。これに関してはとにかく耳が痛い。はい、そうです、すいませんと身を縮こめるしかない。アンチ巨人の理由もこの点が大きいのではないか?
そんな体験を経て私が学んだのは「説明できない不合理」である。