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スタジアムで、あの時何があったのか?
パリのテロをスポーツ誌記者が語る。
posted2015/11/24 10:50
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph by
AP/AFLO
どうも皆さん、ご無沙汰しています。
この11月13日にパリで起こった同時多発テロは、フランス全土を震撼させました。事件から数日が過ぎても、テレビ局は通常の番組に差し替えて、テロに関する特別番組を放映し続けています。日本に置き換えると、戦前の2・26事件とか、戦後のよど号ハイジャック事件、連合赤軍浅間山荘事件、オウム地下鉄サリン事件などと同等かそれ以上の衝撃であると言えます。
それではテロが起こったときに、パリの人々はいったいどうしたのでしょうか。スタッド・ド・フランスでサッカーの試合を見ていたジャーナリストの友人から電話で話を聞きました。
現場の様子はどうであったのか。
そしてフランスが標的にされる理由は何であるのか。
ここに掲載するのは、テロの翌日におこなわれた『レキップ・マガジン』誌の記者であるザビエ・バレとの電話インタビューです。私とは『フランスフットボール』誌の記者時代から20年来の友人であり、フランスで最も信頼の置ける記者のひとりです。まずは、バレがスタッド・ド・フランスでの体験談を語ります。
自爆テロだと知ったのは、試合の後だった。
――昨日はスタッド・ド・フランスに行っていたのか?
「子どもたち2人(カミーユとエンゲラン)と招待席で見ていたから、いつものようにプレス・スタンドからの観戦ではなかった」
――テロが起こったときの状況はどうだったのか?
「事件に関して君に言うべき大事なことがいくつかある。まず最初に、ブーンという爆発音を聞いたのは9時15分過ぎだった。たぶん9時16分か17分のことだ」
――1度だけだったのか?
「最初の爆発音がそのときだった。それから3分後に再び爆発音がした。いったい何が起こったのだろうと、誰もがいぶかった」
――大爆発だったのか、それともそれほど大きな音ではなかったのか?
「それは……われわれが座っていたのはスタンドの反対側で、音はピッチの向こうから聞こえてきた。プレス席のある方とは逆だ。だから私は、隣に座っていたフランス・サッカー協会のフィリップ・マイヤールと『ワーオ! いったい何があったんだ?』と言いあった。反対側とはいえ、爆竹が破裂したような強い爆発音であったからだ。そして3分後には、さらに爆発が起こった。そこで、『一体これはどういうことか?』と、みなで話し合い始めた。
ただ、具体的に何が起こっているのかは、何もわからなかった。記者たちはみなツイッターで情報を得ようとしたが、スタジアムの電波状況がとても悪く、誰も状況を把握できなかった。実際にはふたつの自爆テロが起こっていたのだが、それを知ったのは試合の後だった」