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トミー・ジョン後の「潰れる」覚悟。
ヤクルト・館山昌平が帰ってきた。
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![田口元義](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/7/5/-/img_75003d1c8e96afbf93ce622c330de78e8574.jpg)
田口元義Genki Taguchi
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2015/09/15 10:40
![トミー・ジョン後の「潰れる」覚悟。ヤクルト・館山昌平が帰ってきた。<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/d/6/700/img_d6fdbf8d716c28698b07f6b885173461143161.jpg)
石川、小川らが二桁勝利をあげているが、「ヤクルトのエース」と言えば館山昌平だという声も根強い。
「潰れるつもりで投げました」の裏にある狙い。
その殊勲者が、確かにこう言ったのだ。
「潰れるつもりで投げました」
全力投球の意識が過剰な比喩となったとも受け取れなくはないが、大手術から復帰した投手だけに、思わず耳を疑いたくなるコメントでもあった。
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ただ、そこには狙いがあったのも事実だ。館山はこんな言葉を残している。
「復帰して最初のほうは、投げているとボールがだんだん抜けてきて精根尽きてしまっていましたけど、首脳陣の方たちが登板間隔を空けてくれたり、イニング数を気遣いながら、そうなる前に代えてくれたりしたので、だんだん自分のペースで投げられるようにはなっていますね」
ブランクが長かったからこそ、初回から全力で投げる。そのことで、徐々にペース配分を見極める。成果がはっきりと現れていたのが、9月6日の広島戦だ。
「粘り強く投げられたと思います」と本人が語っていたように、館山の真骨頂である打たせて取る投球が光った試合だった。
併殺打を打たせる低めへのコントロール。
7回を97球、3安打にまとめられた大きなポイントは併殺打の数だ。
2回と3回の走者一塁、5回と6回の1死一、二塁の場面で、ことごとく併殺打を打たせて相手のチャンスの芽を摘んだのだ。館山が満足げに投球を振り返る。
「野手の間を抜けてヒットになるのは仕方がない。フォアボールも単打なんだと割り切りました。野手を信頼して、とにかくボールを低めに集めてゴロを打たせることだけ考えて投げた結果、ゲッツーを多く取れたんだと思います」
この試合、4四球を与えながらも今季初めて無失点に抑えられたことも大きな収穫だったという。館山が続ける。
「7回までいけて、ゼロで抑えられたのが一番でしたね。いつもはフォアボール絡みの失点が多かったんですけど、ランナーを出しても最善の状態で投げることができたのが、一番のプラスじゃないですか」