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とことん熱かったG1クライマックス。
新時代の新日本プロレスを徹底検証!
text by
プチ鹿島Petit Kashima
photograph byEssei Hara
posted2015/08/18 11:15
G1優勝決定戦史上で最長の32分15秒の激闘を制した王者・棚橋。「8年ぶりに夏を極めました。シリーズが長く、勝負がきつかったので充実感が凄い!」とコメント。
G1の最終日。すべての観客には「達成感」があった。
今年のG1に新たに加わったキーワードがあった。
それは「達成感」だ。
7月20日に開幕し、全19大会。約1カ月にわたる過酷なロード。開幕前からファンはまず全選手の無事を祈った。最終戦の両国国技館の客席に漂うあのハイテンションは、優勝戦が控えているという理由だけではなかった気がする。観客も、ついにこの場にたどり着いたという達成感があったのだと思う。夏の風物詩と言えば24時間テレビだが、今年は新日本プロレスがひと足早く達成感を参加者に味あわせてくれた。
ここでポイントとなったのがネット配信である。
これだけ長期間にわたっておこなわれるリーグ戦は、本来なら星取表の経過がわからなくなるはずだが、ファンは新日本プロレスが始めたネット配信サービスで日々の動向がチェックできた。すべてが可視化されて、祭りの勢いは両国にたどり着いたのだ。24時間マラソンのランナーを迎えるような空気が両国にはあった。盛り上がるのは当然だろう。
棚橋弘至は……営業活動の鬼と化していた。
さて、優勝決定戦の棚橋弘至対中邑真輔。「新日本プロレス暗黒期」を過ごしてきた2人の対戦や関係性は、あらゆるメディアが解説してくれるだろう。だから私は見たまま、感じたままを書こうと思う。
今年1月、私の著書の出版記念トークライブに棚橋弘至は参戦してくれた。直に話を聞いてみたかったのはその「営業努力」である。
どんなに激しいファイトをしても古参の新日信者からブーイングを受けた棚橋。猪木とは正反対のキャラクターだからだ。棚橋は「ポジティブ思考の前にすべてを受け入れる」ことにした。そこからのスタート。
一生懸命やっていれば新しいファンには必ず伝わると信じ、日常を犠牲にしてプロモーション活動に励んだ。「プロレス」を知らない人には「棚橋弘至」に興味を持ってもらうことにした。自分で「100年に一人の逸材」と言い続け、プレゼンの鬼と化した。
新日本プロレスを「喜怒哀楽」で例えるなら、猪木は「怒」と「哀」で勝負した。残りの「喜」と「楽」を棚橋が現在やっているのだと思う。ここでいう「喜」「楽」とは観客目線。会場に足を運んだファンに来てよかったと思わせて家路に着かせる。
地道な努力の結果、新日本プロレスは新規観客の獲得に成功し、満員の観客であふれかえるようになった。