プロレスのじかんBACK NUMBER
G1の勝者は棚橋弘至だったが……。
中邑真輔が貫き通した、ある信念。
posted2015/08/17 14:30
text by
井上崇宏Takahiro Inoue
photograph by
Essei Hara
7月16日に発売された『Number』は、14年ぶりのプロレス(新日本プロレス)特集だった。その記念すべき特集の顔、つまり表紙を飾るプロレスラーは、史上初の“新日本プロレス総選挙”と称したファン投票によって決められた。
投票結果は、棚橋弘至が4479票を獲得して1位に。2位は中邑真輔(4160票)となった。その差わずか319票ではあったが、「新日本プロレスのエースは棚橋なのだ」と多くのプロレスファンが認めたという事実が強烈に残った。
他方で、7月25日に発売されたプロレス専門誌『ゴング』の表紙は中邑真輔。
こちらは「日本が世界に誇る、別格の輝き第1位!」というキャッチを入れた。これはつまり、新日本のエースは棚橋弘至、しかし、新日本というブランドを世界に発信する際の顔役は中邑真輔なのだということ。このことは、北米やヨーロッパ各地の遠征先で中邑が別格の人気を誇っていることで証明済みでもある。だから7・5大阪城ホールで全身にスパンコールが施されたド派手な赤の忍者姿で登場したときも、これは和洋折衷デザインの海外仕様のコスチュームなんだろうな、とすぐ腑に落ちたほどだ。
8月14日、15日、16日の両国国技館3連戦をもって、新日本プロレス恒例の真夏の祭典『G1 CLIMAX 25』が終幕した。
今年のG1は、約1カ月間もの期間をかけて開催された熱狂と地獄のロード、全19大会。ファイナルの優勝決定戦には、その“新日本のエース”と“新日本代表”が勝ち残った――これが2015年のリアルだ。
「棚橋弘至の根底にあるものってなんなんスかね?」
「ねえ、棚橋弘至の根底にあるものってなんなんスかね?」
3連戦初日の14日。棚橋は激闘の末、ハイフライフロー2連発でAJスタイルズを下してAブロック代表として優勝決定戦進出を決める。大会終了直後、その一戦を控え室のモニターで観ていたであろう中邑と会場の駐車場でばったり出くわした時、急に声をかけられた。
「中邑さんがわからないものを、ぼくに即答できるわけがないですよ」
「勝つことにっていうか、なんにでもあそこまでガツガツできる性格ってなんなんだろう。棚橋弘至のこれまでの人生に何があったんだ(笑)。わかんねえけど、いまはそんなこと考えてる場合じゃないっスね。とにかく明日のオカダですよ、オカダ」
そう、中邑は翌15日、オカダ・カズチカと優勝決定戦に進出するBブロック代表を争うことになっていた。
はたしてこちらも死闘だった。