スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
スペイン女子代表がW杯後に“反乱”!
全選手とリーグが監督に退任要求。
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byGetty Images
posted2015/07/09 10:40
W杯前の撮影で、スペイン代表チームのメンバーはカメラに向かっておどけて見せた。選手同士の仲はいいことが伝わってくる。
「これは癇癪やヒステリーなんかじゃない」
それに世間の注目を集めやすいW杯の敗退直後、それも帰国前というタイミングであれば、メディアもこの問題を取り上げてくれるはず。選手たちはそこまで考えた上で、今回の声明を出したのである。
アーセナル・レディース所属のナタリア・パブロスは言う。
「これは癇癪やヒステリーなんかじゃない。私たちは長年代表が抱え続けてきたにもかかわらず、今までは全くメディアに取り上げられなかった問題を明らかにしただけ。多くの理由から、今が問題を公表するベストのタイミングだった。この要求を伝えるためにはグループが1つになるだけでなく、これまで得られなかった社会的なサポートが必要なんです」
日本もスペインも、女性は逞しい。
「再びワールドカップがあればもう一度同じ準備をする。唯一の失敗はルーマニアとブルガリアが直前に試合をキャンセルしてきたことだけだ。ワールドカップ敗退の要因をテストマッチ2試合に求めるべきではない」
渦中のケレダは自身のチーム運営に不備がなかったことを改めて主張すると共に、辞任の意思を否定して全てを協会に委ねる意向を示している。そうすれば友人ビジャールが守ってくれると考えているのかもしれないが、今回ばかりはそうはいかないだろう。
スペイン女子サッカー界の歴史を作った23人の選手たちは、女子1部リーグ全チームのキャプテンの支持を得て、現体制が変わらない限り、二度と代表でプレーしないという決意まで表明している。
そうなれば9月にはじまるEURO2017予選の辞退もあり得るだけに、いい加減、ビジャールも事の重大さに気づいたはずだ。
6月27日、ビジャールは初めて女子代表の選手たちと直接話し合う場を設けた。ケレダの処遇についてはまだ結論が出されていないが、ここまで問題を大きくしてしまった以上、監督交代に踏み切ることは間違いないだろう。
女子サッカー界の未来を切り拓くべく、ラ・ロヒータたちはワールドカップ後も決死の覚悟で戦い続けている。
日本もスペインも、女性の逞しさには頭が下がるばかりだ。