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リレー重視が実った4×100mの「銅」。
桐生祥秀らが手にしたリオ五輪切符。
posted2015/05/10 10:40
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
AFLO
事前の予想をいい意味で裏切る、考えうる最高の成績だった。
5月2日、陸上の世界リレー大会がバハマ・ナッソーで行なわれ、日本男子は4×100mリレーで3位、銅メダルを手にした。合わせて、8位以内の国が獲得できる来年のリオデジャネイロ五輪の出場権を獲得したのだ。
1位はアメリカ、2位はジャマイカ。アメリカはタイソン・ゲイ、ジャマイカはウサイン・ボルトら一線級がいる中での3位だ。
しかも日本の状態を考えれば、これ以上はない結果と言えた。
今回の世界リレーは、日本にとって逆風の中での大会だった。
1つは、大会の日程が昨年よりも3週間ほど早まったこと。そのため、織田記念国際を早めに実施するなど例年とは異なる競技スケジュールを強いられた。それは選手の調整にも影響を及ぼし、調子の上がらないままの選手が目立つことにもなった。
スケジュールが変わったことが災いしたのか、大会を前に山縣亮太ら故障者も出ていた。そのため、本来想定していたリレーメンバーが揃わなかったことも、今大会の期待度を下げていた。
さらに織田記念国際で好結果を残した選手らの代表辞退があり、メンバーに選出された塚原直貴も、バハマに入ってから故障によって欠けることになった。北京五輪の4×100mリレーで銅メダルを獲得した一人であり、本人も調子が上がっていることを自覚していただけに、離脱は大きな痛手だった。
急造のチームが7番目のタイムで決勝へ進むと……。
最終的に、補欠から昇格した大瀬戸一馬を1走、藤光謙司を2走、桐生祥秀を3走、谷口耕太郎がアンカーという構成で挑むことになった。「予選を通過できるのか」という不安もあるなか、予選では全体で7番目のタイム、38秒73で決勝へ進む。
この時点でリオデジャネイロ五輪の出場権を確定させた日本は、決勝で「思わぬ」レースを展開する。
大瀬戸が好スタートを見せると、2走からアンカーまで、3位をキープしてゴールしたのだ。タイムも38秒20と予選を大きく上回るものであった。