サムライブルーの原材料BACK NUMBER
座右の銘は「自信と過信は紙一重」。
太田宏介が三浦淳寛にもらった言葉。
posted2014/10/28 10:40
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Takuya Sugiyama
太田宏介の自宅には、一枚のユニホームが飾られている。
横浜FCでプロのキャリアをスタートさせ、己の土台をつくった充実の3年間。ステップアップのために清水エスパルスへの移籍を決めてチームを離れる際に、尊敬する先輩・三浦淳寛からもらったものだ。
そのユニホームには三浦のサインとともに、メッセージが力強く書かれていた。
「自信と過信は紙一重。頑張れ」
いつしかこの言葉は、太田の座右の銘となる。
希少な左利きの左サイドバック。左足から繰り出される精度の高いキックを武器に、清水エスパルス、その後移籍したFC東京で不動の地位を築く。
そして今年10月には2010年1月のイエメン戦以来となるA代表復帰をついに果たし、あのブラジル相手に数少ないチャンスをつくったのが彼のクロスだった。ハビエル・アギーレ監督に強い印象を与えたに違いない。
自信にはなった。しかし過信にはならない。
自宅に戻れば、必ずユニホームを見る。
自宅に戻れば、必ずあのユニホームに目をやるという。
「元々、国見高の小嶺(元)監督の言葉だそうで、ウチの国見出身者の(徳永)悠平さんや(平山)相太くんも知っていました。僕は結構調子乗りのところがあるから、僕の性格に合った言葉なんです。自信を持つのはいい、でも過信にならないそのギリギリのところで上を目指せって、今のプレーに満足するなって、アツさんには常々言われていましたから」
ブラジル戦を終えて帰国してから、なお一層レベルアップに励もうとする彼の姿がFC東京のグラウンドにあった。
人との出会いを大切にしてきた。それを己の成長につなげてきた。
原点の横浜FC時代。
高木琢也監督、スーパースターの三浦知良など影響を受けた人は多くいるが、なかでも三浦淳寛と3年目の'08年に監督に就任した都並敏史の存在はとりわけ大きかった。左サイドバックの“大先輩”たちの教えを、彼はスポンジのように吸収していく――。