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ミランの一流選手が心から信頼する、
遠藤友則トレーナーの「整える」技術。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byGetty Images
posted2014/10/13 10:40
15年前にイタリアへ渡り、ミラン一筋で治療をしてきた遠藤友則トレーナーは、現在、ムンタリやデヨングなど有力選手たちが列をなすほどの人気となっている。
東洋医学の知識のほとんどは、イタリアで独学。
西洋医学では解剖学が発達し、治療方針を痛めた患部から中心に考える。高名な『ミランラボ』もこれがベースである。しかし、東洋医学はそうではない。問題の本質を見抜き、遠藤は「整える」という答えに行き着いた。
「もし内転筋がパンパンに張っている選手がいたら、お尻の中臀筋をチェックし、再教育すれば、内転筋の張りはポンと取れる。拮抗筋でバランスを整える」
エスパルス時代は東洋医学の知識はほとんどなく、イタリアに行ってから独学したという。当時はインターネットも発達しておらず、専門書も高価だったので自分でイメージを作った。友人、恩師にも疑問を帰国の際に尋ねた。すると、徐々にスタッフの中にも遠藤の理解者が現われ始めた。
「同僚が『お前が言っている治療のエビデンスを見つけた』って言ってくるんです。たとえばアキレス腱炎を抱える選手の80%が、中臀筋が弱いと。まさにバランスが崩れて、他の部位に負担がきている」
方向性を後押ししてくれた操体法。
調べて行くうちに、操体法にも興味を持ち始めた。仙台の医師・橋本敬三が西洋医学と東洋医学を掛け合わせて生み出した治療法で、その孫弟子にサンフレッチェ広島や川崎フロンターレでトレーナーを務めた西本直がいる。遠藤が彼らの著作を読むと、そこに書いてあったのは、まさに自分が現場で感じていたことだった。
「目の前がスーっと明るくなった感じで、この方向性で行けばいいんだと確信しました」
選手からの応援もあり、遠藤はクラブ内で存在感を増していく。東洋医学に理解がないドクターと衝突してばかりだったが、選手が援護してくれた。