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「サッカー日本代表人気停滞の原因は?」元監督トルシエが記者の質問にズバリ「W杯でドイツとスペインに勝ったが…Jリーグと世界に違いはない」
posted2025/04/13 17:00

1カ月間にわたって日本に滞在したトルシエ氏。彼の目に移った現在の日本サッカー観とは
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田村修一Shuichi Tamura
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JFA/AFLO
この3月6日に来日したフィリップ・トルシエは、1カ月の日本滞在と短期の中国滞在を終えて、4月5日に帰国の途に就いた。来日自体は昨年2月以来だが、これだけの長期となるといつ以来であるのか筆者も咄嗟には思い出せない。
この間、彼は、メディアへの露出を続けながら、クラブやJリーグ、日本代表など日本サッカーの現状をつぶさに見て回った。日本代表やパリ五輪代表については、ベトナム代表監督として実際に対戦したり、中継で試合を見て継続的に追いかけていたものの、日本の環境に実際に触れるのは、トルシエにとっても久しぶりのことだった。
以前、世界有数と評価した日本のエコシステム(※サッカーをめぐる環境システム。三笘薫や守田英正ら大学経由で大成した選手が多いことなどを指摘)、日本サッカーの現状と課題をトルシエはどう捉えたのか――帰国前に話を聞いた。
20年以上突破できない“ベスト16の壁”が原因だ
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電話の約束は、木曜日(4月3日)の14時だった。だが直前になって、トルシエから「14時半に変えて欲しい」「14時45分にしてくれ」というメッセージが立て続けに入った。45分になり電話をかけると「何度も変更して申し訳ない。ちょっと立て込んでいたんだ」という言葉とともにインタビューが始まった。
――もう用事は済みましたか。
「ああ、大丈夫だ。君が送ってくれた質問表はざっと見た。あまり深くは考えていないがどうにかなるだろう」
――あなたは今回、日本にほぼひと月滞在して、その間に長崎や沖縄、大阪、名古屋を訪れ、Jリーグの試合を観戦しただけでなくクラブの施設も見て回りました。さらに日本代表も2試合見たうえに、協会幹部の人たちとも話をしました。
「その通りで、W杯予選も観戦した。日本サッカーが順調に成長しているのを理解するのに十分な時間だった。ポジティブなダイナミズムを描いている。W杯予選突破は特別な興奮を呼び起こし、明るい展望を人々に示した。誰もが明るい気持ちを持つことができた。
日本サッカーの中心は日本代表であり、サッカーをめぐる問題の中核は代表とそのパフォーマンスにあることをこの事実は示している。君は日本サッカーの人気停滞を問題視しているが、停滞の原因は代表がW杯でベスト16の壁を突破できずにいることにあると私は思う。輝きを与えるためのさらなる転機が必要だが、それは代表のパフォーマンスによってもたらされる。代表がさらなる高みに到達することだ」
――つまりベスト8ということですか。