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社会人野球の育成力は半端じゃない!
都市対抗で見つけた2人の好素材。
posted2014/08/01 10:50
text by
小関順二Junji Koseki
photograph by
SPORTS NIPPON
この夏、高校野球の地方大会を22試合、社会人野球の都市対抗を14試合見た。そこで感じたのは、全力プレー・全力疾走では社会人野球に一日の長がある、ということである。
高校生は「全力プレーを」と思っても、運動能力や緊張感を持続させる精神面の部分で、徹底できないことがある。そういう心身のブレが、年齢と共に、体力面でもピークにある社会人選手には極めて少ない。
さらに社会人は高校生や大学生とは違い“後”がない。独立リーグという選択肢は生まれたが、ほとんどの選手は社会人野球を終えれば、それはイコール野球人生の終わりを意味する。全力プレー・全力疾走を社会人のほうが徹底できるのは、ある意味当然なのである。
18歳から40歳以上までが同じグラウンドでプレーする。
社会人野球は幅広い年齢層の選手が出場することでも知られる。今大会出場選手のうち1970年代生まれの選手はコーチ兼任を含めて25人いて、40歳以上は佐伯幸三(外野手・松山フェニックス・'70年生まれ)と西郷泰之(内野手・Honda・'72年生まれ)の2人。反対に入社したばかりの高校卒には西村凌(捕手・富士重工業)のように'96年の早生まれもいるから最年少は18歳である。
親子ほどの年齢差がある佐伯と西村が同じグラウンドでプレーをする。これは異なる価値観を有した者同士の戦いとも言えるし、大げさに言えば世代間闘争が日常的に繰り広げられているとも言える。社会人野球の面白さの1つと言ってもいいだろう。
さて、多くの野球選手はプロ入りを最終的な目標に置く。高校を卒業するとき、大学を卒業するとき、プロ入りを希望する選手は「プロ志望届」を提出してドラフト会議でプロの指名を待つ。言ってしまえば好素質の順に高校卒、大学卒の段階でプロ入りを果たす。例外はあるが、そこから洩れた選手が社会人野球の門をくぐると考えていいだろう。