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社会人野球の育成力は半端じゃない!
都市対抗で見つけた2人の好素材。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph bySPORTS NIPPON
posted2014/08/01 10:50
7月27日の準々決勝、対日本新薬戦に7回途中から登板、1回1/3を完璧に抑えた富士重工業の石崎剛。無名の高校で投げていた頃から注目されていた才能が、ようやく花開こうとしている。
社会人指導者の育成能力は、半端でなく高い。
早熟型の好素材は少なく、なおかつ多いチームでも新人は5、6人と限られているので、社会人の指導者は大変である。先日、高校野球の大阪大会5回戦、大阪桐蔭対箕面東戦が終わったあと、西谷浩一・大阪桐蔭監督と話す機会があり、社会人野球の話題になった。そのとき「社会人指導者の育成能力が半端でなく高い」という結論に落ち着いた。
人材が少ないなら、低迷する選手を再生して新たな戦力に加える。そういう発想が常に社会人野球の指導者にはある。今大会出場選手の中では、石崎剛(新日鉄住金鹿島から富士重工業に補強)と狭間正行(Honda熊本)がそういう代表的選手である。
石崎は'08年、スカウト間で話題になった選手だ。茨城県立三和高校は高校野球の世界では無名中の無名校で、最初に校名を聞いたときはどこにあるのか所在地がわからなかったくらいだ。それが石崎の出現でその周辺が俄然騒がしくなった。
今年、スカウトの人と話しているとき石崎の話題になり、そのスカウトは「もしあのときプロ志望届を提出していたらうちは1位で行きましたよ」と言った。それほど高く評価されているとは知らず、非常に驚いた。
最速149kmのストレート一本槍勝負を見せた石崎。
その石崎も新日鉄住金鹿島(一昨年までは住友金属鹿島)に入社してからは、その名をあまり聞かなくなった。風の便りにサイドスローになったという話が耳に届き、それは本格派から技巧派への転身と判断し、マイナスに評価した。というより、マイナスに評価するほどの関心もなかったと言うほうが正しい。
それが今都市対抗準々決勝、富士重工業対日本新薬戦で初めて石崎を見て、目をみはった。富士重工業が2-0でリードした8回裏、2番手として登板した石崎は4人の打者に18球投げ、その球種がすべてストレートという極端な配球で走者を1人も許さなかった。ストレートの最速は149kmで、そのほとんどは145km以上だった。