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露にした感情、勝負観、代表引退。
内田篤人が見せたもの、語ったこと。 

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寺野典子

寺野典子Noriko Terano

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photograph byGetty Images

posted2014/06/26 16:30

露にした感情、勝負観、代表引退。内田篤人が見せたもの、語ったこと。<Number Web> photograph by Getty Images

右脚にはいまだにテーピングが巻かれているが、それを全く感じさせないプレーで攻守ともに誰よりも自らの持てるものを発揮した内田篤人。

CLでも、上へ行けば行くほど力がでる。

 ギリシャ戦を終えた時点で、奪った勝ち点はわずかに1。鹿島アントラーズでのプロデビュー以降、勝つことで評価を得てきた自負があるからこそ、勝てない現実がもどかしい。

 グループリーグ突破が懸かったコロンビア戦、勝利しなければすべての可能性が消える。

「メンタルの部分は自分で持っていくしかない。そういう準備は、不得意だとは思っていない。相手が強ければモチベーションもあがりますし。そういう戦いをずっとしてきましたからね、4年間。

 ダービーもやったし、チャンピオンズリーグもやった。だから、追い込まれた方が力は出ると思っています。たとえば、チャンピオンズリーグでも、上へ行けば行くほどプレッシャーはあるし、ストレスもかかる。でもそういう重圧のかかる試合は、親善試合とは違う。バレンシア、インテル、アーセナル相手に勝ってきた。どれもいい試合ができましたし、そういうしびれる試合というのを経験してきたつもり。だから、(コロンビア戦も)特別な試合ということではなくて、何かこう、いつも通り、普段通り、だと思います」

感情を発露させていた、普段通りではない内田。

 同じくサイドバックである酒井高徳は、海外へ移籍しただけでなく、そのクラブの主力として欧州の大会を経験したことが、内田に“違い”をもたらしていると語っている。

「やっぱりW杯は、普段の力を出しづらい大会だと思う。みんなすごく頑張っていたけれど、篤人くんはチャンピオンズリーグなどで大きな舞台を経験しているから、心の持ちようが強いと感じた。試合のときも、一人だけなんかちょっと雰囲気が違ったかな。そういうのは、実際にその舞台に行かないと経験できないこと。自分で意識するだけじゃ、できないことだと思う」

 しかしW杯の舞台では、普段通りではない内田の姿も何度か目にした。

 自身が意図したパスにFWが反応できなかった場面での悔しがり方、フリーで攻め上がっているときにパスを要求する仕草、失点後、チームメイトを鼓舞する姿だ。

「あえて喜びすぎないようにした」と、先に紹介した2アシストを決めたドルトムント戦後も不機嫌そうなそぶりを貫くほど、感情の揺れを良しとせず、自身の感情を悟られたくないと努める男が、W杯で感情を発露させていたのだ。

【次ページ】 「この世界は、たらればはないですから」

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