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露にした感情、勝負観、代表引退。
内田篤人が見せたもの、語ったこと。
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byGetty Images
posted2014/06/26 16:30
右脚にはいまだにテーピングが巻かれているが、それを全く感じさせないプレーで攻守ともに誰よりも自らの持てるものを発揮した内田篤人。
頑張ることだけでは、期待に応えたとはいえない。
背負った期待を原動力にできるのも、生存競争の激しいシャルケで培った経験からだろう。そして、厳しい愛を注いでくれるシャルケサポーターの存在が、内田の中に秘められていた闘志を引き出した。
勝利に贈られる熱狂は、敗北には当然冷たい。頑張ることだけでは、期待に応えたとはいえない。ドイツでの日々が教えてくれたプロとしてのルールだ。
6月14日。レシフェのアレナ・ペルナンブーコには日本人サポーターが歌う「君が代」が響いた。
U-17日本代表に選ばれて以降、何度も聴いてきた国歌だが、この日は内田にとっても、格別な「君が代」だったに違いない。
開始早々に先制点を決めたものの、日本はその後2失点を喫して初戦を落とした。
「今日ギリシャも負けたので、次のギリシャ戦は死闘というか、そういう感じになると思う。それは今日勝ち点ゼロだった、自分たちがまいた種だから。ここで負けてずるずるいくようなチームなら、そういうメンタルの選手が集まっているチームだということ。ここでもう1回、チームとしてグッと力を出せないと、たとえ上(決勝トーナメント)へ行けたとしても、ダメだと思うから」
勝つことか、自分たちのサッカーか。
初戦のコートジボワール戦では、自分たちのサッカーができなかったと多くの選手が語った。そして敗戦のショックを「自分たちのサッカーが出来さえすれば勝てる」という自信で打ち消しているようだった。
そんななか、内田は「自分たちのサッカーが出来れば勝てると思うのか、相手が自分たちのサッカーをさせてくれないくらい高いレベルと思うのか、それは人それぞれだ」と話していた。
そして、こうも言っている。
「W杯は勝つことが目標なのか、自分たちのサッカーをすればOKなのか? それは選手だけじゃなくて、見ている人もそうだし、一人ひとりの考え方でしょう」
このとき、自身の考えについての明言は避けたが、別の質問で次のように答えた。
「勝つために何を考えるかと、考えればいいんじゃないですか? ゲームをやっていくなかで自分たちで判断して。ベンチからの声を待つんじゃなくてね。これが試合前にわかっていたら、全部勝てるんだけどなぁ」