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露にした感情、勝負観、代表引退。
内田篤人が見せたもの、語ったこと。
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byGetty Images
posted2014/06/26 16:30
右脚にはいまだにテーピングが巻かれているが、それを全く感じさせないプレーで攻守ともに誰よりも自らの持てるものを発揮した内田篤人。
「代表引退ってそんなに大事なこと?」
ピッチに22人の選手がたち、ひとつのボールを蹴り合うサッカー。
しかし、そのスタイルは多種多様で戦術もさまざま。敵のストロングポイントもひとつではない。わずかに思える差が大きな違いを生んでいる。流動的に動く試合を勝利へ転がすための術はひとつではない。だからこそ勝つことが難しいし、でもだからこそ勝ちたい。
「もっと難しい試合もあったし、この3試合だけがすべてじゃないからね。でも、3試合のために4年間やってきたし、それができなかったのは本当に悔しい」
願いが叶わずに、W杯が終わってしまった。
試合後のテレビの取材で「代表を引退することについて、一度考えてみようと思っていました」と話した内田。引退示唆というニュースが駆け巡った。
6月25日の取材の席で、そのことについて訊いた。
「別に代表を辞めると断言したわけじゃないから。この大会が終わったら、ちょっと考えようかなと漠然と思っていた。いろいろ考えることもあり、どうしようかなというかっていうのはありましたけど。
代表は選ばれないと、引退とか言えないし。どうこういう大きな問題じゃないと思うんですけど。そんなに(みんなにとって)大事なこと? これは俺個人のことだから、静かに見守ってもらえれば」
「ちょっと1回考えようかなって」
過去には代表戦に強行出場したことで、怪我が再発したこともある。リーグ戦、カップ戦、チャンピオンズリーグ、そして代表戦とフル回転の4年間だった。
「クラブも代表も大事だし、代表をすごくリスペクトしているぶん、100%でいられない自分が行くのはどうかなと思ったりね。でもみんな辞めると思っているでしょ。そういう風に持っていくのは止めてね。ただ考えるだけだから。それも、俺の中では今始まった話じゃないし」
内田の言葉に集中する記者の視線を振り払うように笑いを誘う。
以前から考えていた想いが、W杯を経験したことで変わったのだろうか?
「そうだね。まあ……このまま終われば、なんか負け犬のような気がするし。うーーん。ずっと思ってきた気持ちもあるし。
だからまぁ……。考えますということ。それは、本当に(W杯を)やる前から決めていたことだから。ちょっと1回考えようかなって」