ブラジルW杯通信BACK NUMBER
露にした感情、勝負観、代表引退。
内田篤人が見せたもの、語ったこと。
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byGetty Images
posted2014/06/26 16:30
右脚にはいまだにテーピングが巻かれているが、それを全く感じさせないプレーで攻守ともに誰よりも自らの持てるものを発揮した内田篤人。
「スタッフのために」とゴールも決めた。
'10-'11シーズンは加入直後から先発でプレーし、リーグ戦は低迷したもののチャンピオンズリーグベスト4まで進み、ドイツ杯に優勝した。
'11-'12シーズン序盤は、一度は譲ることになった先発の座を終盤には取り戻し、リーグ3位という結果を残した。ヨーロッパリーグでも決勝トーナメント進出を果たしている。
'12-'13シーズンには、シャルケ不動の右サイドバックとして存在感を示した。肉ばなれからの復帰戦となったドルトムント戦では2アシストをマーク。チャンピオンズリーグでもグループリーグを突破。リーグ戦でも4位となり、2シーズン連続でチャンピオンズリーグ出場権を獲得している。
そして、ドイツでの4シーズン目となった'13-'14シーズンも順調に試合出場機会を重ねていたが、2014年2月の試合で負傷し、戦線を離脱したままシーズンを終えた。
「あと数週間リーグ戦があれば、復帰できていたはず。リハビリを支えてくれたシャルケのスタッフには申し訳ない」と話している。しかし日本代表では、W杯ブラジル大会のメンバーに入ると5月27日のキプロス戦で先発し、「怪我を治してくれたスタッフのために」とゴールも決めた。
「人のために頑張った方が頑張れるのかな」
アメリカへわたってからの2試合でも先発出場したが、途中交代している。
「活躍できればいいなと思うけど、まずはチームが勝つこと。自分のことというよりはね。日本が勝ち点1でも3でも拾って次のステージへ、少しでも上へということじゃないですか。ブラジルは地球の反対側ですけど、見てくれている人もいるし。人のために頑張った方が頑張れるのかな」
負傷した自分をピッチに立たせようと奮闘してくれたスタッフ。リハビリの現場で出会った他競技のアスリートたちの存在。「次のW杯では試合に出る」と誓った4年前には想像もしていなかった“想い”が彼のモチベーションとなっていた。