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地元愛、救世主、そして投資事業。
プレミアに見る「オーナー」の形。 

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並木裕太

並木裕太Yuta Namiki

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photograph byREUTERS/AFLO

posted2014/04/25 10:50

地元愛、救世主、そして投資事業。プレミアに見る「オーナー」の形。<Number Web> photograph by REUTERS/AFLO

2011-2012シーズンにチェルシー史上初のCL優勝を果たし、ドログバと喜びを分かち合うアブラモビッチ(左)。

北米スポーツのモデルをプレミアでも適用できるか。

 しかしこうした状況も好転の兆しが出てきています。UEFA加盟クラブ全体で見ると、収入の伸び率を選手年俸の伸び率が上回る事態が続いてきましたが、昨シーズン、これがついに逆転(図参照)。コンテンツ充実化のためのコストが落ち着き、収益化へのステップを歩み始めたと見ることができるわけです。

 スポーツ界にアメリカの投資家オーナーたちが増えることに対して、私はポジティブに受け止めています。北米の4大スポーツリーグ(NFL、NBA、MLB、NHL)は経営面においては世界最高峰のモデルを備えていると言えます。そしてプレミアに目を向ける投資家の多くは北米でのオーナーシップをすでに経験している。

 つまり彼らは、クラブの価値を向上させる術を心得ているのです(価値が上がる、それは第一に戦力が高まり強いチームとなること、そして魅力的なサッカーを提供することで収益性の高いクラブとなることを意味します)。

それではJリーグも外資参入を認めるべきか……?

 アメリカの投資家たちの目線に立てば、次のように言うこともできるでしょう。4大スポーツの洗練された経営手法を熟知してはいるものの、課題は市場の大半が北米に限られていることだ。しかしサッカーなら、その経営手法を用いて世界市場で勝負できる。プレミアリーグは大きなビジネスリターンを狙える魅力的な舞台ではないか――と。

 ではJリーグも外資の参入を認めるべきかというと、それは時期尚早だと思います。プレミアは放映権を世界中で販売できるようになったことで、その価値の高さを投資家たちに認められました。

 一方でJリーグは、アジア圏内での放映権ビジネスなどを含む「アジア戦略」が種まきの段階。今、開国したとしても、“東南アジアのアブラモビッチ”がもしかしたら現れるかもしれませんが、それはリーグの延命に過ぎず、本質的な価値向上に資するものにはならないでしょう。世界のマネーが注目する、つまりはビジネスとして継続的な拡大が見込まれるような存在となることをまずは目指すべきだと思います。

(構成:日比野恭三)

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