欧州サムライ戦記BACK NUMBER
残り3試合、降格圏のニュルンベルク。
清武弘嗣は愛するクラブを救えるか。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byAFLO
posted2014/04/25 10:30
「精神的にも厳しい……だけど、まだ落ちたわけではない。まだチャンスはある」とコメントする清武。その不屈の精神で連敗を止めて欲しい。
ニュルンベルクが崖っ淵に立たされた。
ホームでレバークーゼンに1-4と惨敗し、順位は2部自動降格圏内の17位のまま。残り3試合を残して、1部残留がかなり厳しくなってきた。クラブは23日にフェルベーク監督の解任を発表し、U-23監督だったプリンツェン氏が暫定監督に就任したが、状況の見通しはいまだ暗いままだ。
レバークーゼン戦、ニュルンベルクのホームであるグルンディッヒ・シュタディオンは4万人以上のファンで膨れ上がった。ゴール裏のサポーターの応援は、威圧感たっぷりの迫力に満ち、とても残留争いをしているチームとは思えないほどの盛り上がりを見せていた。2部降格は断固阻止する。その強い思いがスタジアムに充満していたのだ。あとは、選手がそれを意気に感じてどう戦うか、だった。
スタメン出場した清武弘嗣は、いつものトップ下ではなく、右サイドだった。日本代表と同じポジションだが、攻守のポジショニングで、少し戸惑ったという。
「3日ぐらい前から練習で右サイドになったけど、その時の守備は外に開いたままじゃなく、中に入って絞り、そこにいろって言われた。味方がボールを持つと外に開いてポジションを取らないといけないんだけど、そのまま中にいることが多くなってしまって……。ちょっと難しかったです」
攻撃の手段を封じられ、無抵抗のまま完敗。
攻撃の中心である清武が戸惑いながらプレーする状況では、チームの攻撃が機能するはずもない。しかも、序盤からレバークーゼンにボールをキープされ、ゲームを支配された。その状況下では、ニュルンベルクの得点の可能性は、セットプレー、カウンター、あとは清武からのスルーパスしかなかった。
「前半、FWのジョー・ドルミッチに2、3本スルーパスを出したけど、ジョーが可哀想だった。相手が研究していて常にジョーの周囲に4人ぐらいいた。しかも攻撃の人数が足りない。オレが行くのもいいけど、それ以上に周囲の人がサポートしに行かないのが問題でしょ。それでも1-1に追い付いたところまでは良かった。でも、後半に入ってすぐに点取られてからはダメだった。グラウンドを広く使えてないし、相手の守備も良かった。オレも決定機を外したしね」
後半2分、決定機を外した清武は徐々にゲームから消え、後半23分に交代した。
チームはその後、さらにカウンターから失点を続けた。1-3になると大音量で相手にプレッシャーをかけていた応援がピタリと止み、1-4になると多くのファンが席を立った。チームは特に抵抗をすることもなく、そのまま90分間を終えた。その瞬間、4万人のため息とブーイングでスタジアムは殺伐とした雰囲気になった。