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地元愛、救世主、そして投資事業。
プレミアに見る「オーナー」の形。 

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並木裕太

並木裕太Yuta Namiki

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photograph byREUTERS/AFLO

posted2014/04/25 10:50

地元愛、救世主、そして投資事業。プレミアに見る「オーナー」の形。<Number Web> photograph by REUTERS/AFLO

2011-2012シーズンにチェルシー史上初のCL優勝を果たし、ドログバと喜びを分かち合うアブラモビッチ(左)。

リバプールの売買で140億円以上稼いだ2人の投資家。

 リバプールの前オーナー、トム・ヒックスとジョージ・ジレットもまた、生粋の投資家です。ヒックスは南カリフォルニア大学でMBAを取得、金融機関や飲料会社などへの投資で成功を収め、NHLのダラス・スターズのほか、MLBのテキサス・レンジャーズのオーナーも務めました('10年に、ノーラン・ライアンらが共同経営する投資グループへ売却)。

 またジレットは世界的コンサルティング会社マッキンゼーの元コンサルタント。マッキンゼーを退職後、NFLのマイアミ・ドルフィンズの株の一部を1億円で買い、業績を改善させた後に3億円で売却。これを元手に投資家に転じ、資金を増大させていきます。やはり彼も、NHL、NBA、MLS、NASCAR(カーレース)など数々のチームのオーナーとなり、投資リターンを得てきました。

 事実、ヒックスとジレットは共同でオーナーシップを保有していたリバプールを'10年、ボストン・レッドソックスのオーナー会社であるフェンウェイ・スポーツ・グループに売却し、1億4000万ドル(140億円)以上の投資リターンを得ています(3億3800万ドル→4億8000万ドル)。

選手年俸の高騰でプレミア全体ではいまだ赤字。

 しかし、ヒックスとジレットのようにクラブの売買で利益を出すことができたのは、現在のところ例外的なケースと言えそうです。

 プレミアのクラブで黒字経営ができているのは半分に過ぎず、20クラブ全体で見るとその収支は赤字(移籍金の収支を含む)。こうした状況下で投資リターンを得るのは極めて困難です。それでもマネーが流れ込んでいるのは、いずれは財務が健全化し大きな利益を生むことになるだろうという将来性が買われているからにほかなりません。

 イギリスの大手金融グループ、バークレイズが冠スポンサーを務めるようになってから、プレミアはリーグビジネスに本腰を入れてきました。放映権の世界販売を開始し、リーグ全体の収入は着実に拡大。それでもなお黒字化できずにいるのは、コンテンツとしての価値を上げるために国外選手獲得のコストが増加したことが大きな理由です(全チームの収入の実に70%が選手年俸に消えています)。

【次ページ】 北米スポーツのモデルをプレミアでも適用できるか。

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