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キズナ、凄みある末脚で大阪杯圧勝。
豪華メンバーの中で見せた成長の証。
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byYuji Takahashi
posted2014/04/07 16:30
キズナが昨年勝ったダービーで2着だったエピファネイアとの差は大きく広がっていた。フランス遠征で得たものも多かったのだろう。
「世界で4番目になった馬だから、このくらいはね」
「そりゃあ世界で4番目になった馬だから、このくらいはね」
と、キズナを迎えた佐々木調教師は笑顔を見せた。
「ツーランクはパワーアップしている。実質4kgぐらい太かったけど、そういう次元の馬じゃない。国内では負けられないと思っていた。なのに2番人気だった。みんな、ぼくの言うことを信用していなかったのかな(笑)。ジャスタウェイとかジェンティルドンナ、ゴールドシップといった強い馬とぶつかる宝塚記念は盛り上がるでしょうね」
武も、シーズン初戦のこの走りには満足していたようだ。
「序盤はムダにエネルギーを使わず、自分のリズムで走り、自分のリズムで仕掛けた。すごくシンプルに乗りました。前にエピファネイアがいたのはたまたまそうなっただけで、マークしたわけではない。ただ、いい並びではありましたね。競馬がしやすかった。なんで2番人気だったのかな。自信はあったんですけどね」
キズナの次走は5月4日の天皇賞・春。その後は6月29日の宝塚記念を経て、昨年同様のスケジュールでフランス遠征に出ると思われる。
最終レース後に行われたミックスゾーンでの囲み取材で、次走の天皇賞の距離(3200m)に関して質問された武は、「2400mのダービーとニエル賞を勝って、凱旋門賞4着になったんだから、不安視されるのがおかしい。もういいでしょう、そんな話は。そういうレベルの馬じゃないんだから」と、珍しく語気を強めた。
ディープ騎乗時と重なる、武豊の表情や言葉。
勝った直後だというのに、いや、勝った直後だからこそ、あまり笑顔がなく、口調も厳しくなる――。
ディープインパクトに乗っていたときの彼が、まさにそうだった。特別な能力を持っていたあの馬に乗った直後だけは、神経が研ぎ澄まされすぎたかのようで、近づくのがためらわれることもあった。
このときの武の表情や言葉は、ディープが4歳初戦の阪神大賞典を快勝した直後を思い起こさせるものだった。
あの武豊をナーバスにさせる……という意味でも、キズナはディープの域に達しつつあるのかもしれない。
凱旋門賞は、「史上最強」と言われたそのディープでも、武が「化け物」と評したオルフェーヴルでも勝てなかったレースだ。が、そのクラスの馬なら近づける、ということも同時に証明してきた。
その凱旋門賞で4着になった昨秋より、遥かにスケールアップした走りを披露したキズナ。この馬にとって、天皇賞・春と宝塚記念は、「日本代表」としての地位を確立するための戦い、といったところか。
キズナをめぐる春は、とてつもなくアツくなりそうだ。