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性別を超えた王者候補ハープスター。
桜花賞、その行く手を阻む馬は?
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byYuji Takahashi
posted2014/04/12 08:00
ハープスターを管理する松田博資調教師はGI6勝牝馬ブエナビスタも管理していた。追い切りを見て「この馬はブエナ以上かもしれない」とコメントしている。
これほど桜花賞という感じのしない桜花賞も珍しい。なぜこんな妙な感覚になるのかというと、大本命というか、ほぼ確実に勝つであろう馬、いや、ここを勝たないとマズい馬が、「女王」というより、牡牝の枠を超越した「王者」になるかもしれないからだ。
その「ここを勝たないとマズい馬」とは、言わずと知れたハープスター(父ディープインパクト、栗東・松田博資厩舎)である。
まず、新潟2歳ステークスで3馬身切って捨てたイスラボニータが、牡馬クラシックの最有力候補の1頭となっている。そうした力の比較に加え、この馬自身、前走のチューリップ賞を、スムーズな競馬ができず鼻差の2着に惜敗した阪神ジュベナイルフィリーズの反省を生かして、大外から鋭く伸びて完勝。ダービーには向かわずオークスに出るとのことだが、その先に待つ大舞台――凱旋門賞への夢が大きくふくらむ走りを見せてくれた。長い直線で見せた伸びやかな末脚は、東京やロンシャンでさらに威力を増すことは間違いない。
祖母のベガと同じ、チューリップ賞でのパフォーマンス。
桜花賞トライアルで、クラシックディスタンスの大舞台での飛躍を期待させた――というところは、祖母のベガとまったく同じである。ベガも、チューリップ勝を楽勝したことにより、鞍上の武豊に、
――距離不足のマイルでこの走りなら、オークスはほぼ勝てるだろうな。
と確信させた。
ものすごく強い馬というのは、こんなふうに、何かを飛び越えた夢とか期待を周囲に抱かせる力を持っているようだ。あのベガにディープの血が入っているのだから、強いはずである。
本来なら、阪神ジュベナイルで負けたレッドリヴェールや、同世代の牡馬、前述のイスラボニータのほか、トーセンスターダムやトゥザワールド、ワンアンドオンリー、バンドワゴンらと比べるべきなのだろうが、私は、上の世代のキズナやジャスタウェイあたりと比べてもいい超大器だと思っている。
大外18番枠を引いたが、牝馬同士で枠がどうこうという次元の馬ではない。よほどひどい騎乗ミスかアクシデントでもない限り、ここでは負けないだろう。