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キズナ、凄みある末脚で大阪杯圧勝。
豪華メンバーの中で見せた成長の証。
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byYuji Takahashi
posted2014/04/07 16:30
キズナが昨年勝ったダービーで2着だったエピファネイアとの差は大きく広がっていた。フランス遠征で得たものも多かったのだろう。
キズナが父ディープから受けついだある“悪癖”。
メンバーがGI級なら、レース当日の混雑ぶりや、パドックのざわめいた雰囲気もGIのようだった。
パドックに現れたキズナは、騎手を乗せずに歩いていたときも、武を背に迎えてからも、何度も尻っ跳ねをしていた。そのたびにどよめきが起きた。
馬体重は498kg。フランスでは馬体重を発表しないので、ニエル賞および凱旋門賞出走時との比較はできないのだが、昨年5月のダービー出走時より20kgも増えていた。胴まわりや腰のあたりが逞しくなり、武も、追い切りで跨ったときから「ガッチリしてきた。いい傾向」と、肉体面での成長を歓迎していた。
尻っ跳ねをするのは、まだ幼さが残るからなのか。父のディープもそうだった。余計な力を使うことになるし、怪我をする恐れもあるので、できればやめさせたいところだろうが、偉大な父から悪い癖まで一緒に受け継いだ仔のほうが走るのだから、サラブレッドというのは難しい。
馬群が二つに分かれる、珍しいレース展開に。
ゲートが開くと、好スタートからハナを切ったトウカイパラダイスを、カレンミロティックとビートブラックがかわして行く。
やや掛かり気味のメイショウマンボはそれらを前に見る4、5番手。エピファネイアはさほど行きたがるところを見せず、6番手の外を進む。キズナはそこから2馬身ほど後ろの最後方からレースを進めた。
1、2コーナーを回りながら馬群が縦長になり、向正面に入ったときには、前の3頭と後ろの5頭に馬群が分かれる、ちょっと珍しい展開になった。前の馬群と後ろの馬群との差は10馬身ほどもあった。
前半1000m通過は1分0秒5。速すぎることもなく、遅すぎもしない。前にも後ろにもチャンスのある流れだ。
3、4コーナー中間点の勝負どころでも、まだ前の3頭が後ろを離していた。スタンドがどよめいた。
まずエピファネイアが動き、先行馬群をかわしにかかった。
ワンテンポ遅らせてキズナが仕掛け、エピファを追いかける。
4コーナーを回りながらラスト400mを切り、最後の直線。
キズナが見せた、他馬を呑み込むような末脚。
エピファが鋭く伸び、その外からキズナが凄まじい脚で追い上げてくる。ラスト200m地点で並んだ、と思ったら、もう突き放しにかかっていた。
グーンと伸びるキズナは、スパートしてからどんどん加速をつづけ、ゴールが近づくほどにスピードを上げている。
まさに、他馬を呑み込むような末脚で差し切り、最後の3、4完歩は流すようにしてフィニッシュした。
もちろん、ダービーを勝ったときも強かったのだが、この大阪杯で見せた強さには、とてつもない「凄み」と「威圧感」があった。「良家のお坊っちゃま」というイメージが、どこかに吹っ飛んでしまった。
2分0秒3の勝ちタイムで、2着に粘ったトウカイパラダイスを1馬身半突き放した。上がり3ハロンはメンバー最速の33秒9。エピファは追い込み切れず3着、メイショウマンボはキズナとエピファのスパートについて行けず7着に終わった。