サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
福西崇史が見抜いた意外な成果。
選手目線で分析したNZ戦の後半。
text by
細江克弥Katsuya Hosoe
photograph byTakuya Sugiyama
posted2014/03/07 10:40
試合後「相手に2点取られたということもあるので課題は大きい」と語った長友佑都。
長友がチャレンジしていたインテルでの動き。
福西が「出来が悪かったとは思わない」という理由は、この試合の第一義が“確認作業”にあったことにある。この試合で日本は、前半のPK以外の3得点に表れる得点パターンの他に、アップデートされた選手個々の動き方と、それに付随する周囲との連係の確認に没頭した。
具体的な例として、福西はあるシーンを挙げる。
「いくつかのシーンで、長友がチャレンジしていたことがよく分かった。インテルでやっていること、つまり3-4-3システムの左サイドMFとしてやっている動きを、4バックの左サイドバックとして試そうとしていた。分かりやすいのは後半21分のプレー」
後半21分、最終ラインからパスをつないで右サイドに展開したニュージーランドは、右サイドバックのルーが長友の背後のスペースを狙ってロングパス。これにバルバロウセスが走り込むが、長友は先にボールに追い付き、危なげなく吉田麻也にボールを預ける。
吉田は左サイドに開いた遠藤保仁に縦パス、遠藤はダイレクトでこれを落とし、再び長友から香川、香川から本田とダイレクトでつなぐ間に長友は左サイドのタッチライン際を70パーセント程度のスピードで駆け上がった。この動きが、左サイドMFとしてインテルで見せている長友の攻撃意識の高さである。
カウンターの場面で確認できた“リスク”。
「スタートポジションの問題ではなく、意識の問題。インテルの場合はポジションが一つ前だから、行ける時は迷わず行く。その意識は、この試合でも何回か見られた。相手が格下だったということもあるけど、自分がより積極的に攻撃的に絡もうという意識でチャレンジしていたと思う」
しかし一連の攻撃は、長友が徐々にスピードを上げ始めた瞬間に本田がボールを奪われてカウンターを食らう結果になった。ニュージーランドは長友が空けた大きなスペースに展開し、右サイドに残っていたバルバロウセスがフリーの状態でドリブルを開始。ペナルティーエリア内に侵入したところで吉田が対応し、ボールを外に蹴り出した。
「ボールを奪うことができたから良かったけど、あのエリアを簡単に使われるようでは厳しい。使われたとしても、吉田は相手をペナルティーエリアの中に入れないようなポジショニングを取っていないとリスクが大きい。つまり、それが長友のチャレンジによって、長友と吉田の間で、またはその他の選手との間で“確認”できればいい」
確認とは、想定できるいくつかのパターンの中から“ベスト”を選択することである。
「長友があのタイミングで前に出た時、もしボールを奪われないでうまく使えていたらどれくらいの効果があるのか、それを見極めて行くべきなのか、自重すべきなのか。それから、ボールを奪われた時にどう対処するのがベストなのか。吉田がサイドに釣り出されないように、パスの出し手を潰すのか、それとも逆サイドに展開させるように仕向けるのか。そういったことを、これまでの関係性や連係がある中でもう一度確認すればいい」