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八重樫、村田、井上の「前座試合」が、
日本ボクシング“いい時代”の証だ! 

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阿部珠樹

阿部珠樹Tamaki Abe

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photograph bySANKEI SHIMBUN

posted2013/12/11 10:30

八重樫、村田、井上の「前座試合」が、日本ボクシング“いい時代”の証だ!<Number Web> photograph by SANKEI SHIMBUN

岩佐(左)のいるバンタム級には3人の日本人世界王者がいる激戦区。WBCが山中慎介、WBAが亀田興毅、WBOが亀田知毅。試合後、誰とやりたいかたずねられた岩佐は「亀田興毅ですね」と即答したが、興毅はスーパーフライ級への転向を表明しているため、実現可能性は低いか。

 12月6日のボクシングはなかなか豪華なカードが並んだ。メーンイベントはフライ級の八重樫東の世界タイトル防衛戦。セミファイナルがミドル級村田諒太のプロ転向第2戦。その前の試合が怪物などという声もかかるライトフライ級井上尚弥の東洋太平洋王座決定戦。3人とも勝ち、試合内容も充実したものだったが、見ていて一番面白く感じたのは井上の前、前座の前座とでもいえるような試合だった。

 東洋太平洋バンタム級のタイトルマッチ。チャンピオンの椎野大輝に岩佐亮佑が挑んだこの試合は、内容だけでなく、試合の質が大げさにいうと、いまの日本のボクシングのレベルを的確に教えてくれるようなもので、なるほど、そうかと考えさせられた。

 チャンピオンの椎野は12戦10勝9KOのハードパンチャーで、今年の6月にTKO勝ちで王座に就いた。一方の岩佐は16戦15勝、唯一の負けはあの山中慎介の日本王座に挑戦して喫したもので、山中が世界に飛び出したあとには難なく日本王座を獲得した。2度防衛して世界に挑戦するため王座を返上していて、現在は世界ランク1位。格からいえばむしろ椎野より上かもしれない。

十分にメーンイベントになるような試合が、2番目に。

 東洋太平洋王座を日本人同士が争うのは軽量級では珍しくないが、それでもこのカードはコンパクトな後楽園ホールなら十分にメーンイベントになるような顔合わせだった。それが5試合組まれた中で2番目に行われる。前菜に小振りのステーキが出てきたようなものとでもいえばよいか。

 サウスポーの岩佐が身長とリーチの差をいかして的確なリードパンチで椎野の突進を封じようとするのに対して、椎野は、サウスポーに向うときのオーソドックスな戦術、つまりいきなり右を繰り出して活路を見出す作戦を取り、序盤から試合は激しい動きを見せた。

 スマートで優雅な岩佐とブルファイターの匂いがする椎野の対照も面白く、前座に置くにはもったいないと、まだ空席もある観客席の人たちも感じたのではないだろうか。

【次ページ】 入り方の穏やかさとその後の激しさの落差。

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